冬のさなか、湖には厚く氷が張って、蹴っても叩いてもびくともしない。
ひそかに待ち焦がれていたその日がついにやってきた。
「あらリリック、何か御用?お茶会の予定を立てるにはまだ早いようだけど」
「今日は別件でお誘いに来たんだ。ユイシィ、湖に遊びにおいでよ」
「何で湖に――ああそうか。もうそんな時季なのね」
「幸い、しばらくは晴れ続きだって空渡りの精霊たちも言ってたし。下の子竜たちも連れてくるといいよ、そしたら遊びながら面倒をみられるでしょ。エレも付き添ってくれるから安全だしね」
「他のみんなには、この事は?」
「これから声をかけに行くところ。帰りにもう一度ここに寄って、首尾を報告するよ」
「ええ、楽しみにしているわ。スケートなんて一年ぶりですものね」
そう。一年のうちでも今の季節だけ、湖でスケートができるんだ。
獣人の職人さん特製のブレードを固定した靴で、氷の上を滑走する遊びなんだけど、これが結構楽しい。
ふだん湖で遊ばないジェンも、きっと喜んでやってくるだろうな。ノイは器用な滑り方を見せてくれそうだし、ラルカの滑る姿は白い氷の上に映えるだろう。まだ慣れてないアグリナさんの手をひいて教えてあげるのもいい。
楽しみだらけじゃないか。
「よーし、善は急げだ!」
僕は期待に胸を膨らませて、次の訪問先へと走り出した。
結論から言うと、目論みは大当たりだった。
ジェンは文字通り風と遊ぶように滑るし、やっぱり転んじゃうアグリナさんはとても可愛い。メオが小さい子竜たちを乗せたソリを押すのに、一緒につかまってるんだけど中々ついて行けないんだ。
ラルカは滅多にない素敵な笑顔を見せてくれた。通りすがりの郵便屋さんが手を振ったのと偶然同じタイミングだったけど、もちろん偶然だ。
ノイはロイとペアを組んで、氷の上にきれいなスパイラルを描いてみせた。満場からの拍手喝采。さらに笑って眺めていたユイシィを引っぱり込んで、今度は三人でくるくる回りはじめた。
みんな本当に楽しそう。
みんなを湖に誘って本当に良かった。
「……なあクララ。リリックの奴は何をやってるんだ?」
「お昼ごはん担当よ」
「昼メシ?」
「急に予定が空いたってミリュウさんが来たでしょう。それでエレにスケート教えてくれるって言ったんだけど。エレは自分のスケート靴なんて用意してなかったから、リリックが自分のを貸すって言いだしたのよ」
「それで、あんな端っこで釣りなんかやってるのか」
「バカよねえ。自分が一番みんなと滑りたがってたのに」
僕の事なんか気にしなくていいんだよ。みんなが楽しそうなら、それで僕は満足なんだから。
「涙がツララみてえになってるぞ」
ほっといてくれってば。
銀盤円舞曲(ひだり/2006年2月6日寄贈)
ひだりさん作、「ええ恰好しいのリリック」です。サイト『穴の下』1000Hit御礼でフリー配布されていたものを、速攻でかっさらって
参りました(爆笑)。
ひだりさんとは【暗竜術サーチ】への登録を機にお知り合いになったのですが、その後も何回かメールのやり取りをする機会に
恵まれまして。そんな中、この作品については「小品ではありますが、かの同盟の方におひとつ如何でしょう?(笑)」と掲載の
快諾(?)をいただきましたので、こうしてありがたく展示の運びと相成りました。
うふふふふ、やはりリリックと「涙」は切っても切れませんね。「泣きべそ」「マジ泣き」「泣き笑い」どれをとっても格別の味わいが
・・・って、そう言えばこの「泣き笑い」についてはまだアイコンがありませんでしたっけ。
・・・今度、作っちゃおうかな(ぼそり)。
ひだりさん、ありがとうございます!!!