ラブレター
 
(※このSSは、『メオの初恋』の続編として書かれています)
 
(イフロフの家、メオの部屋。机に向かって手紙を書いているメオ)
メオ:・・・うーん、これじゃ変か。リリックの奴、なんて書けばいいって言ってたっけ・・・。(考え
   込んで)・・・こう・・・だったかな。違うな・・・えーと・・・これでもねーし。・・・あー・・・うー・・・
(とうとうペンを投げ出して椅子の背もたれに寄りかかるメオ)
メオ:あーあー、もう分かんねーよ!!だいたいオレが気のきいた手紙なんて書けるわけ
   ねーじゃねーか!やっぱ男なら直接・・・
アグリナ:何やってんの?
メオ:おわっ!
(メオの顔を上からのぞきこむアグリナ。がたん、と椅子がひっくり返る)
メオ:・・・いきなり驚かすなよ!
アグリナ:何よ、勝手に驚いたくせに!
メオ:んだと!?
(机の上の手紙に気付き、手に取るアグリナ)
アグリナ:・・・何これ、手紙?『突然のお便りをお許しください』・・・?
メオ:(赤くなって)こら、読むな!!返せよ!!
アグリナ:・・・これ、あんたが書いたの?
メオ:ああ、そうだよ!・・・ほら、返せってば!
アグリナ:普段本を読まないどころか、字も滅多に書かないあんたがねー・・・。
メオ:(さらに赤くなって)うるせーな!いいじゃねーか別に。
アグリナ:(ニヤリとして)ふーん?
メオ:い・・・言っとくがな、好きな奴ができたからとかそういうワケじゃねーぞ!
アグリナ:(ニヤリとして)へーえ?
メオ:・・・なんだよ、その顔は?
アグリナ:あんたって、案外純情なところがあるのね〜。知らなかったわ。
メオ:(真っ赤になって)だから、関係ねーって言ってるだろ!!
アグリナ:まあまあ、ここはひとつおねーさんに任せなさい!あんたがラブレター書こうとしてる
     くらいだもん、どうせどうしたらいいか分かんなくて困ってるんでしょ?
メオ:「おねーさん」だぁ!?・・・大体、おまえだって似たようなもんだろ!
アグリナ:う・・・うるさいわねー(汗)。あんたよりマシよ!いいいから、黙ってあたしについて
     来なさい!
メオ:・・・どこへ行くんだよ。
アグリナ:こういうことはね、実際に経験してないとなかなか分からないものなの。だから、
     まずは身近な人に聞いてみるのよ。
メオ:身近な人・・・?まさか、オヤジか!?
アグリナ:そう、そのまさかよ。さっ、行きましょ!
 
(イフロフの部屋に入る二人。湯飲みで茶を飲んでいるイフロフ)
アグリナ:オヤジー。ちょっと聞きたいことがあるんだけど。
イフロフ:・・・何だ?
アグリナ:オヤジと母さんって、どうやって結婚したの?
(思わず茶を吹き出しそうになるイフロフ)
イフロフ:ごほ、ごほっ・・・何だ、藪から棒に・・・。
アグリナ:いや、そう言えば母さんからその時のことを聞いてなかったなーって思ってね。
(アグリナをじっと見るイフロフ)
イフロフ:・・・おまえ、好きな男ができたのか?
アグリナ:い・・・いやあねー(汗)、そんなんじゃないわよ!
イフロフ:・・・そうか。
(何となくほっとした様子のイフロフ)
イフロフ:よし、いい機会だからここで話しておこう。これはアグリナ、お前の将来にも関係する
     ことだから、よく覚えておくようにな。
アグリナ:(あたしの将来?)
イフロフ:わしが母さん、・・・フィナと知り合ったのは、まだ火竜術士として認められて間もない
     頃だった。アグリナ、一人前と認められた竜術士が最初にしなければならないことは
     何だ?
アグリナ:え?・・・えーっと・・・
イフロフ:・・・「基本竜術」に載っていたはずだが。
アグリナ:・・・(汗)。
イフロフ:(ため息をついて)まあいい、後でもう一度読み直して暗記しておくようにな。・・・一人
     前になった竜術士の最初の仕事は、その属性の竜の里を訪ねることだ。これから
     幼竜や卵を預かる身なのだからな、自分の人となりを知ってもらう上でも一回里を
     訪ねるのが道理と言うものだろう。
アグリナ:ふーん。
イフロフ:通常は師匠と新人が一緒に里へ行くのが慣わしなのだが、生憎わしの時は師匠に
     火急の用事があってな、わし一人で里へ行くことになってしまった。
メオ:オヤジ、まさかその時も迷ったってんじゃ・・・
アグリナ:いくらオヤジだって、さすがにそれはないんじゃない?
イフロフ:・・・実を言うとそうなのだ。
アグリナ・メオ:へ?
イフロフ:ちゃんと地図も持っていたのだが、すっかり道に迷ってしまってな。三日三晩彷徨い
     歩いた挙句、息も絶え絶えになったところを通りがかりのフィナに救われたのだ。
メオ:(うわ、かっこわる〜・・・)
アグリナ:(最低の第一印象ね・・・)
イフロフ:外の人間に里の場所を教えるわけにはいかん。かといって、わし一人では里に辿り
     着くことは不可能だった。そこでわしは身分を偽り、里のそばまで一緒に旅することに
     したのだ。
アグリナ:・・・。
イフロフ:道中、色々な話をした。行商という仕事のせいでもあるだろうが、フィナは実に沢山の
     ことを知っていたよ。またあの明るく、はっきりした性格は、それまでほとんど女性と
     会話などしたことの無かったわしには眩しいものだった。
アグリナ:・・・それでオヤジは母さんのことを好きになったの?
イフロフ:そうだ。彼女と別れ、里に着いてからも、頭の中は彼女のことでいっぱいだった。
     ・・・そして、里からの帰り道、彼女と再会したわしは本当のことを話し、迷うことなく
     言った・・・「わたしと結婚してください」とな。
メオ:へぇー。
イフロフ:アグリナ、メオ。お前達には少し早いかも知れんが、大事なことをひとつ言っておく。
     ・・・恋愛において大事なことはな、いかにして自分の偽りの無い気持ちを素直に表に
     出すかだ。
アグリナ・メオ:・・・。
イフロフ:多少不恰好でも、心のこもった言動はきっと相手の心をも動かすだろう。これは恋愛
     に限らず、竜術を使う時にもそのまま当てはまる。・・・このことを肝に銘じておけ。
アグリナ・メオ:はい。
 
(メオの部屋に戻る二人)
アグリナ:・・・驚いたー。オヤジがあんなに熱く語るなんて。
メオ:「多少不恰好でも」・・・か。オヤジらしいよな。
アグリナ:じゃあ、部屋に戻ったらさっきの続きを書きましょ!あたしも手伝うから。
メオ:でもよ・・・。
アグリナ:オヤジが言ってたでしょ?「心のこもった言動はきっと相手を動かす」って。
     ・・・あんたの心からの言葉を書けば、それがきっと最高のラブレターになるわよ!
メオ:そう・・・か、そうだよな!よし、いっちょ気合の入ったの書くか!
アグリナ:よーし、その意気!
 
〜1週間後〜
(エレの家の前。立ち話をしているエレ、郵便屋、アグリナ、リリック、タクト)
エレ:困ったわねぇ。
郵便屋:そうなんですよ。手紙を預かったのはいいんですが、渡す相手が見付からなくて・・・。
    真相を知ったときはびっくりしましたよ。
エレ:・・・メオには、本当のことを言ったんでしょう?
郵便屋:それが、全く信じてくれないんですよ。「そんなわけがない」って。・・・エレさん、どうにか
    なりませんか?
エレ:代わりに断ってもらう、という手を考えていたんだけど・・・あいにく水竜の里にはそれ
   らしい子がいないのよねぇ。
郵便屋:・・・そうなんですか。
タクト:それにしても、まさかメオが惚れたっていう相手がリリックだったとはね〜。もてる男は
    辛いね、リリック!
リリック:やめてくれよ!僕だって迷惑してるんだから。
郵便屋:アグリナさん、その後のメオくんの様子はどうです?
(アグリナの方を見る一同)
アグリナ:あいつは本気よ。今朝なんか、とうとう「これ以上見付からないなら、自分で水竜の里
     へ探しに行く」って言い出したわ。
郵便屋:あれ、確か異種族の里への出入りは禁止されてませんでしたっけ?
エレ:そうなのよ。だから、そうなる前に何とかしないと・・・。
アグリナ:それから、あいつ最近村の鍛冶屋に出入りしてるみたいなの。
郵便屋:鍛冶屋・・・。何をやっているんでしょうか?
アグリナ:それがね、聞いてみたんだけどどうしても教えてくれないのよ。・・・心中用の刃物でも
     作ってなきゃいいけど。
タクト:心中って・・・やっぱりリリックと?
アグリナ:今のあいつならやりかねないわね。
リリック:ひえぇ〜、勘弁してよ〜〜〜(泣)。
エレ:・・・仕方ないわね。リリック、あなたメオの手紙に返事を書きなさい。
一同:え?
エレ:そして、直接会ってきっぱり断るのね。平和的に解決するにはこれしかないわ。
リリック:えー、何で僕がそんな・・・
エレ:元はと言えばあなたがいけないんでしょ?・・・それにね、私メオにちょっと同情しちゃう
   のよ。
郵便屋:同情・・・ですか?
エレ:自分の想いが相手に伝わらないのって、一番悲しいことなのよ。今のメオもきっとそうだ
   と思うわ。
アグリナ:あ、あたしその気持ちよーっく分かります!
タクト:(この二人は、そっち方面では苦労してるからなぁ ・・・(苦笑))
リリック:でも・・・
エレ:リリック、・・・私の言うことが聞けないの?
(エレの目が据わる。リリックの肩をぽん、と叩くタクト)
タクト:悪いことは言わない・・・諦めろ。
リリック:そ、そんなぁ〜〜〜(泣)。
 
〜翌日〜
(エレの家、テラス。半ばやけになっているリリックと、それをなだめているタクト)
タクト:さてと、これで準備はオッケーだね。いつメオが来てもいい。
リリック:・・・メオなんて金輪際来なきゃいいんだ!あいつめ、今度会ったら一発殴る!
タクト:まあそう怒らないでさ・・・(汗)。
リリック:これが怒らずにいられるかい!?女装だよ女装!僕にこんな趣味はないっての!!
タクト:で・・・でもさ、周囲の公認で女装できる機会なんてそうそうないと思うよ?ある意味
    ラッキーって考えられなくもないんじゃ・・・
リリック:ふん、女装させられてるのは君じゃなくて僕だからね!そう思ってるんなら代わって
     よね!
タクト:まあまあ(汗)、ほんのちょっとの間じゃないか。それに良く似合ってるよ、うん。
リリック:(きっぱりと)ぜんっぜんうれしくない。
タクト:・・・気持ちはよく分かるけどね、(声をひそめて)これはエレさんの命令なんだろ?
    あんまり悪態をつくと後で大変なんじゃないか?
リリック:・・・くっ(涙)。
(家の時計を見るタクト)
タクト:あ、そろそろ時間だね。僕は家の中にいるから。それじゃ・・・
(ニヤリとするタクト)
タクト:頑張れよ。
リリック:何をだよ!!
(家の中に引っ込むタクト、一人残されるリリック)
リリック:(とほほ、何だって僕がこんな目に合わなきゃならないんだ!どう考えたって僕を女の
      子と見間違うメオが悪いのに・・・。・・・もういいや、こうなったらとことん楽しんで
      やる!見てろよメオめ・・・!)
(テラスの手摺にもたれ、滝を見ながら鬱々と考え込むリリック)
リリック:・・・?
(ふと人の気配を感じて振り返るリリック。花束を持ってうつむき加減で立っているメオ)
メオ:あっあっあっあのっ・・・
リリック:・・・メオさん?
メオ:そっそうですっ!あの、あなたが・・・
リリック:(微笑んで)よろしくね、メオさん。
メオ:こ、こちらこそ!
(真っ赤になってリリックと握手するメオ)
メオ:あ、あの、これを・・・
(花束を差し出すメオ)
リリック:何?(出たー、メオの十八番!「いつでもひまわり」だ!)・・・まあ、ひまわりじゃない!
     まだ春なのに、どうやって手に入れたの?
メオ:友人に頼んで、作ってもらいました。オレ、・・・いや僕の一番好きな花なんです。
リリック:ありがとう。(「友人」・・・ね。あの二人だな・・・何か仕込んであるかも知れないな、気を
     つけなくちゃ)・・・くすっ、そんなに硬くならずに、普段通り「オレ」でいいんですよ?
メオ:え・・・あ、いや・・・。
(照れて頭を掻くメオ)
リリック:(何が「え・・・あ、いや・・・」だ!いつもの威勢はどうした!)・・・少し歩きませんか?
メオ:は・・・はいっ!
(家を出て、連れ立って湖のほとりを歩く二人)
リリック:お手紙ありがとう。・・・うれしかったわ。
メオ:そ・・・そうですか?・・・普段手紙なんか書いたことないから、変だったと思うけど・・・。
リリック:(まあ確かにね)ううん、そんなことないわ。あなたの気持ちがとてもよく伝わってくる
     いい手紙だったわ。
メオ:そっ、それじゃあ・・・
(メオの方を振り向くリリック)
リリック:(ざまーみろメオ!)・・・ごめんなさい。私、あなたとはお付き合いできないの。
メオ:えっ、どうして・・・
リリック:実は、私には里に許婚がいるの。
メオ:そ、そんな・・・
リリック:それに、あなたは火竜、私は水竜・・・種族間の恋愛はご法度だって知っているで
     しょう?
メオ:だけど・・・!
リリック:だから、残念だけどあなたの気持ちには応えられないの。・・・本当にごめんなさい。
メオ:・・・。
リリック:(さあ、どう出るメオ・・・)
(うつむくメオ。しばらく無言の二人)
メオ:へへっ、バカだよなオレ・・・。一人で勝手に突っ走ってさ・・・。
(顔を上げるメオ。その作り笑顔に涙が一粒こぼれ、胸がズキンとするリリック)
リリック:(メオ・・・。本当に、本気だったんだ・・・)
メオ:分かりました、オレも男だ!あなたのことは今日を限りにきっぱりと忘れます。・・・迷惑
   かけてすみませんでした。
リリック:(よ・・・予想外だなぁ(汗))そんな・・・迷惑だなんて・・・。
メオ:最後に、一つお願いがあるんですが・・・聞いてくれますか?
リリック:・・・何でも言って。
メオ:・・・これを着けて欲しいんです。
(胸元から小箱を取り出し、リリックに手渡すメオ。箱を開けるリリック)
リリック:これは・・・指輪?
メオ:そうです。あなたに贈ろうと思って、ここ数日無理言って村の鍛冶屋に弟子入りさせて
   もらって作ったんです。
リリック:・・・。
メオ:まだまだ不恰好だけど、オレのありったけの想いを込めて作ったんです・・・良かったら
   してみてくれませんか?
(メオの服のあちこちに焦げた跡があるのに気がついて、また胸がズキンと痛むリリック)
リリック:(メオ・・・そんなにまで相手のことを・・・)
(指輪をメオに返すリリック)
リリック:いいえ、私にはこの指輪はできないわ。
メオ:(肩を落して)そうですか・・・。
リリック:・・・あなたにしてもらいたいの。
メオ:!!!
(差し伸べられたリリックの指に指輪をはめるメオ。指輪を太陽にかざして見るリリック)
リリック:この赤い宝石、とてもきれい・・・。
メオ:それはルビーです。火竜一族の守護石なんですよ。
リリック:ありがとう。・・・ふふっ、こんな指輪をしたまま里に戻ったら、長老に何て言われる
     かしら・・・。
メオ:えっ、それじゃあ・・・。
リリック:この指輪、もらっても構わないかしら。・・・あなたと出会えた記念に・・・。
メオ:も・・・もちろんですっ!喜んで!
リリック:ありがとう。・・・私、あなたのことを決して忘れないから・・・。
(じっと見つめ合う二人)
リリック:・・・メオ、目をつぶってくれる?
メオ:え?
リリック:・・・いいから。
メオ:・・・はい。
(緊張した様子で目をつぶるメオ。その頬にそっとキスをするリリック)
リリック:(ちょっとサービス過剰だったかな?まあいいや、メオの想いに応えるにはこれくらい
      やってもバチは当たんないだろ・・・)
メオ:#&?*@♂!!!!
リリック:・・・指輪のお礼♪今日は本当に・・・
(「楽しかったわ」と言いかけて目を家のほうに転じるリリック。そこに真っ青な顔で立っている
 ユイシィ。ばさっ、という音を立ててユイシィの手から回覧板が地面に落ちる)
ユイシィ:か・・・回覧板を持って来たのだけど・・・。
リリック:ユ・・・イシィ・・・?
ユイシィ:エレさんはいないし・・・あなたを探してこっちに来てみたら・・・。
リリック:いや、・・・これは誤解だって。ね、ユイシィ・・・
ユイシィ:リリック、あなたってサイテーよ!!
(抜け殻のリリック、ボーっとしているメオを残して走り去るユイシィ)
リリック:・・・。
 
〜後日談〜
(ランバルスの家、書庫)
ランバルス:へぇ〜、それでリリックは寝込んじまったわけかい。
タクト:ええ、相当重症ですよ。なんせ本命がこれで100%見込みなしになったわけですからね。
ランバルス:いつもお前さんにくっついてウチへ来てたのに、最近見かけないからどうしたのか
      と思ってたんだが・・・。
タクト:ユイシィに言い渡されたらしいですよ、「顔も見たくない」って。
ランバルス:かわいそうに・・・。
 
作者コメント:このSSではメオの純情さを書きたかったんですが、ちょっと邪入っちゃいましたね(汗)。
       まあ、至上最高級のリリックの受難話が書けたので良しとしましょう(笑)。さあて、次の受難話は
       どんなのにしようかな♪

ラブレター(渡辺稔/2002年10月25日寄贈)

会長作、リリック受難小説第3弾です。
冒頭にもありますが、この作品は僕の『メオの初恋』という小説の続編として書いたものです。『メオの初恋』は、「風邪を引いた
リリックをを見たメオがリリックを女の子と勘違いする」というもので、当同盟の副会長である支倉あさきさんがイラストを描いて
くださっています。興味のある方は、会長のサイト「MY WORLD」の「いただき物」のコーナーをご覧ください。
この頃から、会長の頭の中では「色恋沙汰関連の受難=メオが登場」という方程式が成立するようになりました(邪笑)。