木竜の心得
 
(梅雨時。マシェルの家、庭先の花を眺めるリリック)
リリック:(う〜ん、さすがマシェルさんだ・・・どの花もきれいに咲いてる。うちのエレは木竜術は
     からっきしだし、そもそも花にあまり縁がない人だからなぁ・・・女の子にプレゼントする
     花を調達するのにも骨が折れるよ、まったく・・・)
(リリックに背後から声をかけるタータ)
タータ:こんにちは、リリック。
リリック:(いつものにやけ顔になって)やあ、タータ。
タータ:どう、きれいでしょ?
リリック:ああ、君は今日もきれいだよ。
タータ:もう、お花のことよ! この家のお花は、わたしとマシェルがめんどうを見てるのよ。
    ・・・時々はルンタッタさんにも手伝ってもらってるけど。
リリック:そうなんだ。いや、きれいだなーと思って見てたところなんだ・・・あのあじさいなんか、
     特にね。
タータ:分かる? 昨日マシェルと咲かせたばかりなの。
リリック:(ため息をついて)うらやましいなぁ。ぼくが木竜術を使えたら、きれいな花をたくさん
     育てて毎日女の子に配って歩くんだけどね・・・。
タータ:(リリックったらあいかわらずね・・・。・・・そうだ!)
(リリックのセリフを聞いて、何かをひらめくタータ)
タータ:ね、リリック。「あじさい占い」って知ってる?
リリック:「あじさい占い」?・・・知らないなぁ。何だいそれ。
タータ:あのね、これは恋の占いなの。
(「恋」と聞いて顔色を変えるリリック、にっこりするタータ)
リリック:恋!?
タータ:うん。今、このあじさいはむらさき色でしょ? このはちの土の中に恋のねがいごとを
    かいた紙をうめておくと、次の日に花の色がかわるの。
リリック:ど・・・どんな風に?
タータ:もしピンク色になっていたらそのねがいごとはすぐにかなうってことだし、青くなっていたら
    そのねがいごとをかなえるのはむずかしいってことなの。そして、もし色が落ちて真っ白に
    なっちゃってたら・・・
リリック:・・・ってたら?
タータ:永久にむり、ってことね。
リリック:へぇ・・・面白そうだね。
(意味ありげな笑みを浮かべるタータ)
タータ:リリック、この「あじさい占い」・・・やってみない?
リリック:えぇ!? いいのかい?
タータ:うん。このはちのあじさいをあげる。・・・大切にしてよね。
(目を輝かせて鉢を受け取るリリック)
リリック:も・・・もちろんだよ。ありがとう! 今晩、早速試してみるよ!!
タータ:(にっこりして)いい結果が出るといいね。
リリック:もちろん大丈夫に決まってるさ! それじゃ!!
(もらった鉢を抱えて喜色満面で走り去るリリック、陰のある笑みを浮かべるタータ)
タータ:うふふ・・・何も知らないで。
マータ:ね、タータ・・・さっきの話だけど。
タータ:なに?・・・「あじさい占い」のこと?
マータ:うん。リリックにわたしてたはち、あれ・・・昨日同調術に失敗したやつじゃないの?
タータ:あ、ばれた? でも、ただすてるのももったいないじゃない?
マータ:でもあれ、花の色が・・・
タータ:そうよねー。多分、明日の朝には真っ白になってるんじゃないかなぁ♪
マータ:リリック・・・。
 
〜翌朝〜
(マシェルの家。タータに占いの結果を報告するリリック)
リリック:・・・でね、朝見たらきれいなピンク色になってたんだよ!
タータ:(思わず)えー!?
リリック:これは、ぼくの願いが叶うってしるしなんだよね? よーし、今から願いごとを叶えに
     行ってくるよ! タータ、ありがとう!!
タータ:あ・・・うん。・・・が、がんばってね・・・
リリック:もちろんさ!!
(走り去るリリック、首を傾げるタータ)
タータ:おかしいなぁ。あれ、たしかに失敗したやつだったのに・・・。
ロイ:話は聞かせてもらったよ。
ノイ:「あじさい占い」・・・なかなかいい思いつきだったじゃない。
タータ:!?
(びっくりして振り向くタータ。にやにやしながら立っているロイとノイ)
ロイ:リリックに目をつけるとはさすがだけど、タータ・・・君はまだまだツメが甘いね。
タータ:ツメ?・・・あーっ、もしかして!
ノイ:そうよ。リリックのあじさいの色を変えたのは私たちなの。
タータ:でも、どうして!? 放っておけばリリックの泣きがおが見られたのに!!
(顔を見合わせて肩をすくめる二人)
ロイ:いいかい、考えてもごらんよ。もし君の思惑通りにあのあじさいが白くなってしまったら
   リリックはいつも通り悲しむだろうけど、それで終わりだろう? それじゃつまらないじゃ
   ないか。それだったら「願いが叶う」って思い込ませて次の行動・・・まあ、それは埋めた紙を
   見るまでもなく想像がつくけど・・・で玉砕してもらった方がいい。
ノイ:それに、今回は相手がリリックだったからいいけど、もしメオあたりだったら「どういうことだ
   これは!」って怒鳴りこんで来たかも知れないわね。その時はどうするつもりだったの?
タータ:え・・・えーっと・・・。
(陰のある笑みを浮かべる二人)
ロイ:だから、誰かを引っ掛けるときは一旦相手を喜ばせるのが肝心なのさ。そのほうが後々
   ダメージも大きくなるしね、こっちの楽しみも増えるってもんだろう?
ノイ:こういうのを「二階へ上げて梯子を外す」って言うのよ。カディオに教えてもらったん
   だけど・・・木竜はいつもこの精神でいなくっちゃ、タータ。
タータ:へぇ・・・そうなんだ。
ロイ:ああ、そうさ♪
ノイ:じゃ、これからも頑張ってねー。期待してるわよ♪
タータ:うん♪
(顔を見合わせて邪笑する三人)
 
〜同、昼時〜
(ランバルスの家。ドアをノックするタクト、沈んだ様子で出迎えるユイシィ)
タクト:こんにちはー。今日もよろしくお願いします。
ユイシィ:・・・。
(並んで書庫の方へ歩く二人)
タクト:あれ、ユイシィ・・・元気ないじゃない。何かあったの?
ユイシィ:(ため息をついて)タクト・・・「春になると変な虫が出てくる」という諺があるでしょ?
     ・・・あれって梅雨時にも当てはまるのかしら。
タクト:「変な虫」・・・?(苦笑いして)あぁ、そう言えばうちにも一人鬱陶しいのがいるな。今朝方
    また大ショックなことがあったみたいで、今はベッドにもぐりこんじゃってるけどね。
ユイシィ:お互い、苦労するわね・・・。
タクト:ああ、まったくだね。
 
作者コメント:いや、何も考えないですむ短編が急に書きたくなりまして(笑)、季節柄あじさいを登場させてみましたが
       いかがだったでしょうか?(おお、よく見ると「一発劇場」と同じ黄金の配役ですね)
       なお、「カディオが教えてくれた」のは諺だけで、「人の引っ掛け方」ではありません。念のため(邪笑)。
BGM:『peppermint kiss』(三原善隆)

木竜の心得(渡辺稔/2002年6月26日寄贈)

会長作、リリック受難小説第4弾です。
この小説は、当同盟の会員でもある夜白成さんの作品(基本的に木竜やカディオさんがメインで登場します)の影響を強く
受けています。リリックの受難と言えば「エレさんのよるもの」と「木竜によるもの」と大きく二つに分かれますが(注:これは
あくまで会長の個人的感覚です(邪笑))、これは後者に当たるわけです。
なお、この頃「木竜授難同盟」というものも立ち上げようか、という話が出ていました。やってることは変わらないしなぁ(爆笑)。