鶏肉の唐揚げ
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- エイザード:『楽園』へようこそ! 私が塔主のエイザード・シアリースです。本日は、タイトルに
- ある通り「鶏肉の唐揚げ」に関する実践魔術・・・いえ、実践料理をお見せしましょう。
- ごくちゃん:・・・・・・・・・・・・。
- エイザード:・・・はい? なぜものぐさな私が自分からこんなことをするのかって?
- (ため息をつくエイザード)
- エイザード:それは、至極ごもっともな疑問です。私自身、別にやりたくてやっているわけじゃ
- ないんです。ただねぇ、ナハトールに「たまには自分で料理くらいしてみなよ? いい
- 勉強になるぜぇ。」などと言われてしまいまして。あまつさえ「でないと今日のデザート
- はあんただけ抜きな。」と脅されてましてね。・・・やはり、昨日好き嫌いして彼の料理
- を残したのがいけなかったのでしょうか。
- ごくちゃん:・・・・・・・・・・・・。
- エイザード:・・・もちろん、その辺りを歩いている鶏さんに向かって「唐揚げになってください」と
- 頼むのが一番手っ取り早いんですが、そうするとまた「それのどこが『料理』だよ!」
- と突っ込まれそうで・・・仕方なくね。アレでも、怒らせると後が面倒なんで・・・。
- ごくちゃん:・・・・・・・・・・・・。
- エイザード:・・・ええ、私としましても弟子に押し付けてしまいたいのはやまやまだったんですが、
- その・・・(ちょっと困った顔をして)色々な理由でそれもためらわれまして・・・。・・・あ、
- そうですね・・・支部長さんという手がありましたか! 今度お鉢が回ってきたらそう
- します。あの人、単純だから簡単に乗せられますしね。
- ごくちゃん:・・・・・・・・・・・・。
- エイザード:・・・ねえごくちゃん、頼むからもうちょっと愛想良くしてもらえませんか? 一応、師匠
- である私の“料理でびゅー”なんですから。
- ごくちゃん:・・・・・・・・・・・・(黙って足元を転がっている)。
- エイザード:・・・いえ、独り言です。何でもありません。さて、では実際の料理に取りかかるとしま
- しょうか。魔術師は「信用」が第一、請け負った仕事は確実にこなさないといけません
- からね。
- (胸元からおもむろにカンニングペーパーを取り出すエイザード)
- エイザード:では、まず材料から。・・・はい? いきなりカンペなんて反則ですって? 何を言うん
- ですか、今まで料理の「り」の字も経験したことのない私が、いきなり右から左へと
- 料理ができるわけないじゃないですか・・・そう、こんな風に(と、何もないところから
- 中華なべを取り出すエイザード)。
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- <材料>
- ・鶏もも肉(数百g)
- ・ニンニク(二欠片)
- ・ショウガ(50g)
- ・片栗粉
- ・調味料(醤油・酒)
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- エイザード:えーとですね。まず、鶏肉を一口大に切ります。そこに醤油・・・なんて読むんでし
- たっけ、これ? ・・・ああ、「しょうゆ」でした! 確かファリスの故郷のさらに東の辺境
- ではポピュラーな調味料らしいですね。あ、ごくちゃん舐めないでくださいねそれ。
- ごくちゃん:・・・・・・!!
- エイザード:醤油と酒を肉が半分浸るくらいにかけます・・・比率はお好みでどうぞ。そしてすり
- おろしたニンニクとショウガを入れて、よく手でもみます。
- そうしたものを一晩寝かせて実際に揚げます。・・・え? 今から一晩も待つのは大変
- でしょうって? ふふふふふ、私に不可能はありませんよ。
- (魔法で時間を進めるエイザード。様子を見に来るナハトール)
- ナハトール:どうー? 頑張ってる、お父さん?
- エイザード:(すまして)ええ、今肉の漬け込みが終わったところです。これから本番の「揚げ」に
- 移るところですが、何か?
- ナハトール:あーあーあー、また大人気ない真似してくれちゃって。何だか、毎日一生懸命下拵え
- してるおれがバカみたいに思えてくるじゃないのよ。・・・あんた、ちょっとは手伝って
- くれると毎日助かるんだけどなぁ。
- エイザード:(間髪入れず)お断りです。
- ナハトール:(肩を竦めて)あっそ。まあ、はなっから期待してなかったけどさ。言ってみただけ。
- エイザード:じゃあ聞かないでくださいよ。
- ナハトール:へいへい。じゃあ、おれはこれで退散するから・・・せいぜい頑張ってむすめさんたち
- にいいとこ見せてやるんだぜ?
- (にやりとするナハトール、少し動揺するエイザード)
- エイザード:余計なお世話です。それより、「デザート抜き」の件は撤回してくれるんでしょうね?
- ナハトール:もちろん。あんたのそれがちゃんと食卓に上ったら、な。じゃあ、頑張れよ〜。
- ごくちゃん:・・・・・・・・・・・・。
- (去るナハトール)
- エイザード:(ニンニクとショウガの余りをごくちゃんの口に放り込みながら)まったく、人騒がせ
- な・・・。
- ごくちゃん:・・・! ・・・!!!!(口の中のものを吐き出す)
- エイザード:では、実際にこれを揚げてみましょう。中華なべにサラダ油を入れて火にかけます。
- 温度の目安は、箸を入れたとき小さな泡がたくさん出るかどうかで見極めます。頃合
- 良しと見たら、先の鶏肉に片栗粉をまぶして揚げましょう。
- 揚がっているかどうかは衣の色をみて判断するそうですが・・・こんなものでしょうか。
- ナハトールは「キツネ色」なんて言ってましたが・・・。
- (揚がったものを味見して相好を崩すエイザード)
- エイザード:・・・うん、悪くありませんね。私もなかなかやるじゃありませんか。
- (揚げたてを狙うごくちゃん、それを穴あきのお玉でガードするエイザード)
- エイザード:ダメですよ、これは私の弟子たちの分です。・・・ごくちゃん、あまり聞きわけがない
- と・・・
- (にっこりするエイザード(目が笑ってない))
- エイザード:一緒に唐揚げにしちゃいますよ?
- ごくちゃん:・・・・・・・・・・・・。
- エイザード:おっと・・・これで最後ですね。ふふ、たまには料理も悪くないかも知れませんね。
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- <ナハトールの一口メモ>
- ・ニンニクはお好みでなくてもいいが、ショウガは面倒くさがらずに入れたほうがいい。これは、ショウガには肉を柔らかく
- する効果があるからさ。
- ・漬け込むときの調味料には、スパイシーなのが好きな人はこの他にコショウやトウガラシを入れてみるといいかもな。
- 最近は「タンドリーチキン」や「チリパウダー」というスパイスの詰め合わせも市販されてるから、そういったものを試して
- みるのもおすすめだ。
- ・鶏肉は生だと切るのが大変・・・と言う人は、「水炊き/唐揚げ用」という予め一口大に切られたものを買うといい。
- ・揚げるときは、油の温度を一定に保つのがポイントだ。高すぎると衣が黒くなって見栄えが悪いし、低すぎると鶏肉が
- 生のまま・・・なんてことになりかねないからな。油が充分に温まったら、中火で休みなく肉を揚げていくといいんじゃ
- ないかな。
- ・衣の付け方は、この料理最大のポイントさ。基本的には肉の表裏に2回ずつ片栗粉をまぶした後、余分なものを
- 振って落とす。これをしないと、揚げたあと片栗粉が付き過ぎた部分が白く残って格好悪くなるからな。
- ああ、袋を使って衣を付けるのもいい方法だが、この場合も衣の付きすぎに注意な。
- ・じゃあな、健闘を祈る! 揚げ物をするときは、火の元には充分注意するんだぜ?