おでん
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- サラ:『楽園』へようこそ。本日は私サラと殿下で『おでん』の作り方についての解説を・・・
- ダナティア:なんであたくしが、こんな庶民の料理に付き合わなきゃならないのよ!
- サラ:殿下、そういう料理を差別するような発言は良くない。
- (ダナティアの方に向き直り、指を一本立てるサラ)
- サラ:例えばの話をしよう。殿下、人間にとって不可欠な栄養素は何だろうか。
- ダナティア:(面倒臭そうに)蛋白質と糖質、各種のビタミンってところかしら?
- サラ:その通り。最初に挙がった「蛋白質」を例にとると、肉や魚なら基本的に何を食べても、
- 含まれる量こそ違うが蛋白質を摂取することができる。もちろん、殿下の大嫌いなカ・・・
- ダナティア:いやあああ!
- サラ:・・・を食べても同じこと。
- ダナティア:・・・い、い、い、一体何が言いたいのよ!?
- サラ:つまり、大事なのは材料であって料理ではない。「庶民の料理」だろうと「宮廷の料理」
- だろうと、材料が同じなら摂れる栄養も同じだということだ。分かりやすく言うとこうなる・・・
- 「腹に入れば皆同じ」。
- ダナティア:あたくし、そんな恐ろしいことを言いながら料理に励めるあなたが信じられないわ。
- サラ:もちろん、人間美味い物の方が食も進むから、様々な料理を研究・研鑽することには
- 充分意味があると思うが。
- ダナティア:(肩を竦めながら)・・・マリアの「屁理屈の女王」という台詞、そっくりあなたに進呈
- したい気分だわ。
- サラ:これは・・・殿下に褒められるとは、光栄の至りだ。
- ダナティア:・・・ッ!!
- (拳を握り締めるダナティア)
- サラ:まずは材料の確認から始めよう。殿下、すまないがそのレシピを読み上げてもらえない
- だろうか。
- ダナティア:・・・分かったわよ。
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- <材料>
- ・大根
- ・椎茸
- ・こんにゃく
- ・白滝
- ・さつま揚げ
- ・ちくわ
- ・もち巾着
- ・うずら卵天
- ・鶏肉団子
- ・昆布(ダシ用)
- ・鰹節(ダシ用)
- ・調味料(醤油・塩・砂糖・酒・みりん・生姜)
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- ダナティア:・・・何だか見たことのない材料が多いわね。これ、ちゃんと食べられるのかしら。
- サラ:大丈夫だ、私に任せてもらえれば・・・
- ダナティア:それが一番の不安要素なのよ!
- サラ:フフフ。
- ダナティア:口だけで笑うのはおやめっ、この鉄面皮!!
- (意に介さず、鍋に水を入れ火にかけるサラ)
- サラ:さて、この『おでん』という料理は基本的に煮込み料理なので、ダシをしっかりとることが
- 重要だ。昆布のダシは取り終わったから、次は・・・(レシピを見る)すまないが殿下、そこの
- カ・・・
- ダナティア:いやあああああ!
- サラ:・・・鰹節を取ってもらえないだろうか。
- ダナティア:(震える手で鰹節の袋を渡しながら)あ・・・あなたといると、寿命がいくらあっても
- 足りない気がするわね!
- サラ:大丈夫だ、殿下の老後は私が責任を持って面倒を見よう。
- ダナティア:(ぶちっ)
- サラ:これで、鰹節のダシも取れた。次は具の下拵えを・・・殿下?
- ダナティア:(溜息をつきながら)はいはい。大根とこんにゃくは軽く茹でて、かまぼこの類は
- 熱湯を注いで油切り・・・ね。・・・ほら、できたわよ。
- サラ:最後に、こうして用意した具をダシ汁の入った鍋に入れる。そして味付けだが・・・ふむ。
- ダナティア:どうしたのよ。
- サラ:この『おでん』という料理には「関東風」と「関西風」という二つの味付け方があるらしい。
- ダナティア:(レシピを見て)・・・関東風は醤油の味がメインで関西風はダシの風味を大事に
- する・・・ってことかしら。
- サラ:流石は殿下だ。実に分かりやすい説明をありがとう。
- ダナティア:・・・あなたに褒められてもちっとも嬉しくないのはどうしてかしらね。
- (肩を竦め、鍋に向き直るサラ)
- サラ:では・・・皆の好みも分からないことだし、ここは適度に両者の特徴を併せ持った味付けに
- することにしよう。
- ダナティア:あなたの口から「適度に」なんていう言葉を聞くと、本当にあたくしの知っている意味で
- 使っているのか自信がなくなるわ。・・・大体、どこからそういう結論が出て来るのよ!
- サラ:殿下、細かいことを気にしてはいけない。
- ダナティア:(ぶちぶちっ)
- サラ:調味料は・・・減塩醤油50cc、塩小さじ1、砂糖大さじ1と、酒・みりん各30ccといった所か。
- 仕上げに生姜を一つまみ・・・
- ダナティア:ちょっと、ここは厨房で実験室じゃなくってよ! 醤油や酒をフラスコで量るのは
- やめて頂戴!
- サラ:この方が正確に量れると思ったのだが・・・では、これは今後使わないようにしよう。
- ダナティア:まさか、今までの当番の時も・・・
- (ダナティアの台詞を無視して鍋をかき混ぜるサラ)
- サラ:さあ・・・殿下、味見をしてみてくれないだろうか。
- ダナティア:いいわ。・・・ただし、味見は自分の手で直接させてもらうわ。
- サラ:(・・・ちっ)
- ダナティア:何か言ったかしら?
- サラ:いや、別に。
- (スプーンで煮汁の味をみるダナティア)
- ダナティア:ふうん・・・悪くないわね。
- サラ:では、あとは1時間ほどじっくり弱火で煮込めば完成ということになる。
- (ダナティアの方へ向き直るサラ)
- サラ:暇になったな。どうだろう殿下、ここは一つ私と・・・
- ダナティア:遠慮させて頂くわ。
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- <ナハトールの一口メモ>
- ・大根は四角くなるように皮を剥いて、さらにその角を落として八角形にすると煮崩れを防げるぜ。それと、下拵えの
- 時は米のとぎ汁を使って煮るとより柔らかくなるな。
- ・大根やこんにゃくは、包丁で予め切れ目を入れておくと早く味がしみる。
- ・確かに「おでん」は煮込み料理だが、ただ長い時間煮ればいいってもんじゃない。さつま揚げやつみれの類は長く
- 煮過ぎると味を煮汁に取られちまうんでな、入れるのは最後にした方がいいな。
- ・具は好みで自由に選んでもらって構わないぜ。ただし、個人的な意見としてはこんにゃくは入れた方がいいと思う。
- これは、こんにゃくに含まれているカルシウムが練り製品の歯ごたえを良くするからさ。他にも、ダシの素として
- 肉類を入れるのもお勧めだ・・・今回は鶏肉の団子を入れているみたいだな。
- ・ダシの取り方は、材料ごとに違うので注意な。昆布は水から入れて、沸騰する前に取り出す。鰹節は煮立たせた後
- 火を止めてそこに入れ、五分くらいしたら取り出すといい。
- ・味付けも、あくまで個人の好みで決めていいと思う(色々と試してみると楽しいかもな)。ただし、酒とみりんはそのまま
- 入れると匂いがきついんで、一煮立ちさせてから入れた方がいいと思うぜ。
- ・じゃあな、健闘を祈る! レシピに囚われる必要はないからな、ぜひオリジナルのおでんを完成させてみてくれ。