−あとがき−

「音楽元ネタ小説」第38弾、「Christmas Eve」はこれにて完結です。合同誌「コーセルテルの音楽会」10号に「Merry Wind」を寄稿して以来、再びの“小説熱”が復活してまして、その勢いで最初に手がけたのがこの話ということになりました。

さて、ここからは今回の話に関する補足などを書いていこうと思います。
今回の話を書くに当たっての原動力は、大きく分けると二つありました。
一つ目、今回の元ネタ曲となっている山下達郎さんの『Christmas Eve』ですが、初めてこの曲を聴いたのは中学生の頃でした。まだ“山下達郎”という偉大なアーティストの名前も知らなかった僕ですが(笑)、英語の授業の一環として英語版を聴いたのをきっかけにCDを買い、その後山下さんの様々な曲に触れ合っていくことになりました。ただ、英語版自体はずっと手元になく(買ったのは普通の日本語版)、それを最近になって手に入れて改めて聴いた結果、「Christmas Greetings〜ジークのクリスマス〜」を書いていたこともあって、エディスの晩年話がおぼろげに浮かびました。
とても有名な曲なので、どこかで耳にされたことのある方が大半だとは思いますが、この曲の歌詞もかなり意味深です。素直に受け取れば失恋ソングなんですが、歌詞に登場する「君」は誰から見た誰なのか、の解釈の仕方によって、様々な受け取り方ができる気がします。
そして二つ目は、映画『半落ち』を見たことでした。この映画は、アルツハイマー病の妻に乞われて殺人を犯してしまった男を描いたものですが、その結末に至る経緯の描写に迫力があり、作中のエディスの言動もかなりここから影響を受けています。『Christmas Eve』で大まかな骨格(この時点では「エディスの晩年の話」「カエデの精霊が登場」くらいしか決まっていませんでした)ができ、『半落ち』でそれが肉付けされた、という順序でこの話は出来上がっていきました。

実はこのテーマは、以前にも「私の人生」(「音楽元ネタ小説」第35弾)で書いたことがあります。奇しくもあのときも、主人公は同じ木竜術士のトレベスでした。「私の人生」では、どちらかというと意識して病状や死に至る経緯の明確な描写は避けましたが、今回はそれに敢えて挑戦してみました。そういった意味では、数ある「晩年話」の中では一番の問題作になってしまったような気がしますが、自分の中では大体書きたかったものは書き切れたかな、という満足感があります。
エディスの過去や死については、今まで色々な作品で少しずつ触れてきました。前述の「Christmas Greetings〜ジークのクリスマス〜」で北大陸時代の話が出て(最後にエディスを迎えにきた二人はここで触れられています)、「天使のささやき」(「音楽元ネタ小説」第21弾)でその死がちらっと出てきています。恐らく今後、改めて彼女の若い頃の話を書くことはないと思うので、この話が事実上エディスの過去話も兼ねることになるのかなあ・・・と思っています。

最後に、時系列について少し触れてあとがきを終わります。
記念すべき「絵巻物」最初の作品である「夏の手紙」は、真竜暦362年の夏の話です。そこから約1年、エディスが倒れたのが真竜暦363年の夏の終わりで、その死が同年の冬。南大陸を出奔したエルフィートとアルフェリアの所在が分かるのが真竜暦368年、「天使のささやき」のエピソードを経て、その復帰が406年という順番になります。
いやはや、「絵巻物」の中でも最大のボリュームを誇る「夏の手紙シリーズ」ですが、こうやって様々な話との繋がりが出てくるというのも、今までの自分の頑張りがあったからこそですね(もちろん、応援してくれる方の存在も非常に大きいです)。そう思うと、何やら感慨深いものがあります。

以上で、「Christmas Eve」のあとがきは終わりです。
機会があれば、ぜひ原曲も聴いてみてください。