−あとがき−
「音楽元ネタ小説」第40弾、『MOON RIVER』はこれにて完結です。『春便り』以来一年半ぶりとなる本伝の小説は、絵巻物史上最大の容量(原稿用紙約120枚分)となりました。
実は、2015年3月末日を以て退職をしました。3月は有給消化の期間に充てたので、家でゆっくり休んでいたんですが、一週間が過ぎる頃には今までの疲れもようやく取れ、創作活動に時間を使おうという余裕が出てきました。というわけで最初に取り組んだのが、この話ということになります。
他の話に漏れず、この話も構想自体はずっと昔にありました。ただ、日々が(特に2014年春以降)激務だったこと、及び書きかけを含め全ての小説ファイルが外付けHDDの故障と共に全て失われたこと(あれはショックでした・・・)もあり、長らく小説を書こうという気になりませんでした。
最初は一週間くらいで形にできたらな・・・と思って執筆をスタートしたんですが、後から後から書きたいことが出てきたこと、それを許す時間的余裕があったことから本文がどんどん増殖し、最終的には通常の本伝小説2本分という異常に長い話が出来上がってしまいました(爆)。
でも、何の縛りもない執筆も、たまにはいいもんです。転がってるネタは山のようにあるので、執筆活動は(少なくとも仕事を再開するまでは)継続したいなと考えています。ひとまず、次はこの話の「補完」となる話を一つ、漉嵌用に書こうと思っています。
●小説の書き方を変えました
さて、今回の話は絵巻物記念号となる第40話ですが、それを機に小説の書き方(あとがきの書き方もか(笑))を変えました。
元来僕は「ト書き小説」出身なので、登場人物の会話から書き始めることが多かったんですが、今回は敢えて会話ではなく、ストーリーの要点を最後まで箇条書きでまとめてから執筆に入りました。
この工夫によって、「何を」「どの順番で」書いたらよいかが明確になり、執筆が格段に楽になりました。また、これだけの容量のものを書き切れたのも、この方式を採用したからのような気がしますね(笑)。今後の執筆にも採用して、書きたいことを書き切れるようにしていきたいと思います。
●話の背景
この話は『Boarding Pass』シリーズ(特に登場人物・話の多いシリーズとして、『PURE AGAIN』『夏の手紙』に次ぐ第三世代となります)に含まれる話です。関連事項を箇条書きで並べてみると(以下全て真竜暦)、
4178年:アリシアがコーセルテルに来る(漉嵌『約束〜アリシアの場合〜』)
4180年:ノルテが初めてアリシアと会話をする(漉嵌『沈黙者』)
4192年:セレネとノルテが初めて会う(『Se.le.ne』)
4205年:セレネが夏の精霊王に即位する
4206年:水竜術士ヴィーカ死去
4208年:木竜術士トレベス死去(『私の人生』)
4212年:地竜術士アリシア死去
4215年:『MOON RIVER』
となります。アリシアと心を通わせることができたノルテが、その死をどのようにして乗り越えていったのか、については僕自身非常に関心がありまして、それを書いてみようと思ったのが執筆のきっかけです。
しかし、書き上げてみてから思いましたが、僕の小説はどうも地竜が主人公の話が多い気がします(笑)。『EARTH BEAT』もそうですし、『夏の手紙』シリーズのジークリートとアトレーシア、そして『Boarding Pass』のノルテと、各シリーズで特に地竜が目立つ傾向があります。それは僕が地竜気質の持ち主だからなのか、それとも姉妹サイトを運営されている崎沢さんが地竜好きだからなのか・・・うーん、謎ですね(邪笑)。
●元ネタ曲について
今回元ネタにした『MOON RIVER』については、既に必要がないくらい有名な曲だと思います。バラード版は「ふーん」くらいの感想だったんですが(笑)、iTunesでボサノヴァアレンジのものを聴いたらこれがまた名曲。現在再生回数が2000回を超えているくらいのお気に入り度合いです。
英語の歌詞について詳しい方はそれほどいらっしゃらないかと思いますが、結構歌詞の端々から話のヒントをもらっています。例えば、
Moon River, wider than a mile:→この歌詞を見て、レーンディア川の川幅を2kmにしました。
I'm crossin' you in style some day.→夏の都は川の南岸にあるので、コーセルテルから見て「川を渡る」ことは「コーセルテルから去って夏の都に移り住む」ことを意味するのかな、と。
Old dream maker,→これはノルテが、剣術の腕を誰かのために役立てたいと願っていたことを、
You heart breaker,→そして、それが叶わなかったことを表しているように思えました。
Two drifters, off to see the world,→僕の中では、この「二人」はノルテとセレネのイメージです。
There's such a lot of world to see.→迷いながら、より良い世界を目指して、二人は手を取り合って生きていくんだろうな、と。
等々。話の内容と全然関係なさそうですが、意外とシンクロする部分が多かったです。
●この話で力を入れた部分
『WINTER WONDERLAND〜冬の都へようこそ!〜』では、冬の都の描写に力を入れました。というわけで、今回は(絵巻物で)今まで名前だけの登場だった「夏の都」について、細かく書いてみようというのが、一つ目です。なお、夏の都のモデルはインドの世界遺産「ラジャスタンの丘陵城砦群」です(その写真を、一部背景の画像として使用しています)。うーん、書いているうちに夏の精霊に対する評価がかなり上がっちゃった気がしますけど、まあいいか(笑)。
二つ目は、戦闘シーンの描写です。夏の精霊は武術の腕を重視するという(絵巻物における)設定に基き、今回ノルテはディオネ、ネレウス&ペリアス、そしてアレスと3回の立ち合いを行っています。それぞれの展開と結果が平板にならないように気を配ったつもりですが、普段から書き慣れていないこともあって難しかったですね。
●ネーミング
夏の精霊については、全てギリシア神話から名前を取っています。夏軍八頭については世界の著名な局地風(実は『Se.le.ne』のときに設定したものから若干の変更があります)から、また夏軍八槍は同じくギリシア神話における風の神の名前から採用しました。用語辞典にも収録しますが、下にその一覧を示します(なお、頭の番号は戦力の大きい順に付けられるので、時期によって変動があります)。
第一頭 フェーン 頭首:テーセウス(ゼピュロス所持)
第二頭 ボーラ 頭首:ヘリオス(ボレアス所持)
第三頭 チヌーク 頭首:アレス(ノトス所持)
第四頭 ミストラル 頭首:テミス(カイアキス所持)
第五頭 アブロオロス 頭首:クレイオス(エウロス所持)
第六頭 ギブリ 頭首:ネレウス(リプス所持)
第七頭 シロッコ 頭首:ペリアス(アペリオテス所持)
第八頭 シャマール 頭首:ディオネ(スキロン所持)
近衛隊 アリゼ・マリティム 頭首:ノルテ
ネレウスとペリアスは双子の兄弟です。また、夏軍八頭の頭首の中では、ディオネのみが女性で、他は全て男性です。今回名前のみの登場だったテミスとクレイオスについては、サイドストーリーでその人となりに触れようと思っています(邪笑←?)。
なお、この中でディオネについては、本伝作品として一本話を書くつもりでしたが、『MOON RIVER』内での展開を受けて、どうするか悩み中です。