−あとがき−

「音楽元ネタ小説」第4弾、「春よ、来い」これにて完結です。いやいや、特に後半はほとんどが会話に
なってしまい、作者が「ト書き好き」なのがバレバレな出来になってしまいました。あはは、先に謝って
おきます(←殴)。

さて、ではここからは元ネタになった音楽の解説と、内容の補足などをしていきたいと思います。
この小説は、松任谷由美さんの『春よ、来い』という歌を聴いて思い付いた話でした。この歌はNHKの
連続テレビ小説の主題歌として使われたこともあるので、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。
ところで、今までの3作では「元ネタ」の歌の歌詞から小説のストーリーを起こして来たわけですが、
今回はちょっと趣向が違います。「春よ、来い」の歌詞はこんな感じなんですが・・・

淡き光立つ俄か雨 愛し面影の沈丁花
溢るる涙の蕾から 一つ一つ香り始める
それはそれは空を越えて やがてやがて迎えに来る
春よ 遠き春よ 瞼閉じればそこに
愛をくれし君の 懐かしき声がする

君に預けし我が心は 今でも返事を待っています
どれほど月日が流れても ずっとずっと待っています
それはそれは明日を越えて いつかいつかきっと届く
春よ まだ見ぬ春 迷い立ち止まる時
夢をくれし君の 眼差しが肩を抱く

夢よ 浅き夢よ 私はここにいます
君を想いながら 一人歩いています
流るる雨の如く 流るる花の如く

春よ 遠き春よ 瞼閉じればそこに
愛をくれし君の 懐かしき声がする
春よ まだ見ぬ春 迷い立ち止まる時
夢をくれし君の 眼差しが肩を抱く

歌詞を見ていただければお分かりいただけると思いますが、この歌詞は小説の「その後」に関する
ものになっているんですよね。戦闘シーンだけでなく恋愛感情の表現も大変苦手な作者ですが
(←致命的(乾笑))、この小説では敢えてその苦手な部分に踏み込んでみました。
具体的に、あの後アヤメは何を考え、どう行動したのでしょうか。こうした「その後」について何がしかの
想いを馳せていただけたなら、作者としてはこれほど嬉しいことはありません。

次に、登場キャラクターについて。主人公のアヤメとハシバミは、珍しく(笑)命名にかなり気を遣い
ました。
アヤメはもちろん「菖蒲」ですが、これは「殺め」という言霊を含んでいます(花言葉は「優しい心」)。
ハシバミの花言葉は「平和」ですが、漢字の「榛」には「とるにたらない木」という意味もあります。
このような名前を選ぶことで物語りに深みを持たせられたらな・・・と、個人的にはかなり頑張って
取材してみました(笑)。
なお、ハシバミにはモデルがいます。そう、高橋しんさんの描かれた漫画『いいひと。』の主人公、
北野君です(つまり、線目なんですね)。性格は温和ですが芯には秘めたものを持っている・・・という
キャラクターにはいつも憧れますね。

それから、本文中に出てくる和歌ですが、あれは『古今和歌集・春の上・53番』の歌で作者は在原
業平。百人一首にも収録されているので有名な歌ですね。
実はこの『春よ、来い』という小説を書き始めたのは去年の3月で、腎臓病で入院する直前だったん
です(つまり、一年近く中断していたというわけ(爆))。で、入院中に「何か読みたい本はある?」と母に
聞かれた時、これを機会に色々勉強してみようと『古今和歌集』をリクエストしたんです。いやー、
高校のとき「一番嫌いな教科は古文」と言って憚らなかった僕がこんなことを言い出すんですから、
人生って分からないものですよね(大笑)。ちなみに、『古今和歌集』は中々味のある和歌がたくさん
収録されているのでお勧めです。しっかりした解説のついたものを手に入れることができれば、
古文が好きになるかも知れません(笑)。

最後に、この小説のテーマについてですが、一つは前作の『Present For You』(番外編)のあとがきにも
書いた「冬軍の存在意義について」でした(これについては本文でハシバミが語ってくれていますので
省きます)。そしてもう一つのテーマは「争いごとを収拾するにはどうすれば良いのか」ということです。
イスラエルの例を見ても分かるように、一度「殺し合い」が始まると恨みや憎しみの連鎖によって、
争いの収拾がつかなくなるのが悲しい現実です。「殺されたから殺す」を繰り返しているうちに、当初は
あったはずの大義や意味も失われ、後に残るのは果てしない「殺し合い」だけ・・・そのような状況に
陥ってしまった時、憎しみに流されずそれをどう解決できるのか。言わば、これは人間の本能と理性の
戦いなのかも知れません。
口で言うほど、「和平」というものは簡単には実現できないものです・・・それでも、その必要性は誰もが
感じています。そんな状況で、人は自ら選んで茨の道を歩むことができるのでしょうか・・・。

以上で、「春よ、来い」あとがきはおしまいです。
機会があったら、ぜひ原曲の方も聴いてみてくださいね!