−あとがき−

「音楽元ネタ小説」第25弾、「カムフラージュ」これにて完結です。現役竜術士(「元」含む(笑))の
過去話第5弾は暗竜術士のメリアさんの若かりし頃の話となりました。

さて、ではここからは元ネタになった音楽の解説と、内容の補足などをしていきたいと思います。
この小説は、竹内まりやさんの『カムフラージュ』という歌を聴いて思い付いた話でした。
“カムフラージュ”というのはフランス語で、意味は「偽装」です。冒頭が

友達以上の気持ち 胸に閉じ込めて来たけれど
心がもう嘘をつけなくて こんなに切ない
ふとした仕草に潜む あなたの想いを確かめる
長い間言えずにいたこと もしかしたら私と同じだと

という部分から始まるこの歌は、タイトル通り「秘めた想いを隠している」という心情を歌ったもので、
初めて聞いた際、僕にはメリアさんの複雑な心境を表しているように強く感じられました。歌詞全体と
しては、どちらかというとこの話の少し後を指していると思える部分が多いのですが・・・気になる方は
ぜひ、実際に聴いてみられることをお勧めします。

さてと・・・では、この話を書くに至った経緯から順に語ろうと思います(笑)。
実はこの話は、去年のかなり早い時期から僕の中に構想としてあったものでした。ただ、時代背景の
設定がかなり複雑になること(「魔獣族」についてのものから、それに関わる国の設定までをしっかり
作る必要がありました)から、長い間書きかけの状態で止まっていたものです。
実際に戦火を交えた者同士の和解の難しさについては第4作の「春よ、来い」でも触れてみましたが、
今回はそれに加えてさらに“民族”という問題を絡めてみた結果、このようなある意味とんでもない
結末に辿り着いてしまいました。「現実はそんなに甘くない」というのが僕の持論ではあるのですが
(=安易なハッピーエンドは求めない、という意味です)、結局は人間社会を裏切ることになって
しまったメリアさんの処遇を含め、過去話の中で一番の「問題作」じゃないかと思います(笑←殴)。

なお、第3話の「人間が、魔獣を恐れている・・・」のくだりは、『ボウリング・フォー・コロンバイン』という
ドキュメンタリー映画(あの有名なマイケル・ムーア監督の作品です)の影響を受けたものです。
アメリカの“銃社会”は有名ですが、あそこまでアメリカ社会に銃が蔓延してしまった原因の一つとして、
この「恐怖」があったのではないかという説が映画では紹介されています。
過去、アメリカでは白人が黒人を奴隷として使役していた時期がありましたが・・・それと同時に白人は
黒人の「叛乱」を恐れてもいて、そのために「自衛」と称して銃を所持するようになった、というのです。
この話の中で、僕は魔獣たちの置かれている現状についてかなり穿った見方をしていますが、この
ような状況ならば同じような思考に凝り固まってしまう可能性もあるだろうな・・・と思ったわけです。

そう言えば、「竜術士の中で、最も謎が多いのは誰か」という話題が、新年初のチャット会で出て
いました。もちろん、本編に登場する竜術士たちはみんな“謎だらけ”と言ってしまえばそれまで
ですが(笑)、個人的にはやはり暗竜術士であるメリアさんが一番大きな謎を秘めていると思います。
「魔獣術士」という職業に就いた理由に始まって、旦那さんとの出会いの経緯。そして何より、その
魔獣術士を辞したであろうその後に、なぜ人間社会に戻らず、魔獣と長らく対立関係にあった竜の
術士になったのか。・・・その理由は恐らく、本編の世界観の中で「魔獣」という種族が現在置かれて
いる状況と深く関わってくることなのだろうだと思います。ということで、今回は、そのうちの「メリア
さんが魔獣術士になった経緯」と「人間社会に戻らなかった(戻れなかった)理由」に焦点を当てて
物語を構築してみました。
(なお、残されたもう一つの大きな謎・・・メリアさんが魔獣術士を辞めて竜術士になる経緯について
ですが、こちらも既に構想があります。ただ、これは番外編(『エレメンタルマスター』とのコラボ
レーション)での執筆になる予定ですので、その“お許し”が出ることを祈りたいと思います(笑))

あとは、本編でもウィルフさんが使っている「魔獣術」。石動先生のサイトにある竜術士の紹介の
ページには「魔獣術には属性はない」との記述がありまして、正直言って当初、僕にはどのような
ものかピンと来ませんでした。
そこで、その話題をTRPGに造詣の深い相楽さんに振ってみたところ、「超能力みたいなものでは
ないか」という意見をいただきました。・・・なるほど、確かにウィルフさんの使った「瞬間移動」は
いわゆる「超能力」の中でもメジャーなものですし、これなら属性という概念がないのも頷けます。
ということで、相楽さんにはこの場を借りてお礼を申し上げておきたい思います。その節はありがとう
ございました。

最後に、今回の壁紙の話を。
話の舞台になっている港町ウォラストの壁紙(第1〜3話)は、イタリアのフィレンツェの写真です。
エリオットという国家の気候風土はギリシャやイタリアといった「地中海性気候」ですので、雰囲気も
それに合わせたものを・・・と思ったのですが、合計で700枚近い写真をチェックするのは本当に
大変でした(笑)。
また、砦(第4・5話)の背景は、実は沖縄の写真です(よーく見ると珊瑚礁が一部写っています(笑))。
当初はこれもヨーロッパの城の写真で統一しようと思っていたのですが、向こうのものは本当に「城」と
いう感じのものが多くて、「砦」(それも、崩れかけたような感じの)という表現に合うものがありません
でした。そこでこの写真に落ち着いた、というわけです。
毎回こうした壁紙を探すのは苦労しますが、またそれが大きな楽しみの一つでもあります。・・・本当は、
オーダーメイドしてもらうのが一番なんですけど、ね(邪笑)。

以上で、「カムフラージュ」あとがきはおしまいです。
機会があったら、ぜひ原曲の方も聴いてみてくださいね!