−あとがき−
「音楽元ネタ小説」第27弾、「ガーティの夢」これにて完結です。カディオさんの過去話としては「青空」
以来実に九ヶ月ぶりの続編となるこの話は、その間ゼロサムにてエレさんの設定がかなり明らかに
なったことなどもあり、結果的に話の展開や登場人物が当初の予定とは大きく変わりました(笑)。
では、ここからは例によって元ネタになった音楽の解説と内容の補足などをしていきます。
この小説は、T-SQUAREの『ガーティの夢』という曲を聴いて思い付いた話でした(もともとカディオ
さんの精霊術の師の名前を“ガートルード”にしたのは、続編でこの曲を元ネタにすることを睨んでの
ものでした(笑))。哀愁漂うソプラノサックスのメロディが非常に美しい曲で、それが志半ばで逝った
ガートルード・・・そして遺されたその夢を象徴しているように感じられます。
「実現できるものは“夢”ではない」とは、僕の大好きな作品である北方謙三さんの『三国志』の中に
出てくる言葉ですが・・・今回の話で僕が一番強く訴えたかったものは、まさにこの“夢”というものに
対する考え方でした。実は、この“夢”をタイトルにしている以上、ガートルードの理想だった「精霊と
人間との平和な共存」は実現不可能ではないかと僕は考えているんです。
精霊たちを前にしたカディオは、再三「理想論を振りかざしていても始まらない」といった意味のことを
言っています。現実世界でも(規模は国家間の紛争から個人間の問題まで様々ですが)理想論を
唱えるだけでは解決しない問題というのは枚挙に暇がありません。もちろん、理想的な解決に向けて
努力することは素晴らしいことだと思いますが、「努力すれば必ずそれが叶う」というほど世の中は甘い
ものでもありません(と、少なくとも僕はそう思っています)。
今自分が置かれている状況の中で、最良の選択は何なのか。そして、それが痛みを伴うものだった
場合でも、敢えてそこに踏み込んでいけるのか。僕たちが日常、様々なレベルで直面させられるこの
問いに、カディオさんはあのような“答え”を出しました。結局それが、エレさんの故郷の滅亡に
繋がってしまったわけなんですが・・・もし皆さんがカディオさんの立場だったら、どうされましたか?
さて、実はこの話は、僕にとってある“一大転機”を迎えた記念すべき作品でもありました。
当サイトの「日記帳」は現在ほぼ閉鎖状態ですが、あそこにあった作品を撤去した理由は、クリムゾン
コミックスの4巻が発売された際、その書き下ろし部分で明らかにされた本編の設定と自分が考えた
設定(この頃は、今に比べると大したものではありませんでしたが(笑))の食い違いが気になって仕方
なくなったからでした。明らかに間違った内容のものを、堂々と展示しておくことが耐えられなかったん
ですね(苦笑)。
この「本編の設定とオリジナル設定が食い違うのが怖い」という困った考え方は、「絵巻物」の執筆を
本格的にするようになった昨年もずっと持ったままでした(ですから、ここまでの内容は一応本編とは
矛盾がないものになっているはずです。・・・考えてみれば、ここまでそれで押し通せたというのも驚く
べきことですね(大笑))。ところが、ゼロサムの2005年の2月号にてエレさん関連の設定がかなり
明らかになったことによって、自分の作った設定と本編の設定がはっきり食い違うことが“証拠”として
読者の方の目に触れてしまうことになりました(笑)。
・・・まあ、考えてみればこれは当たり前の話です。一読者が想像で作り出した「オリジナル設定」が、
作者の設定と一致する可能性なんてゼロに等しいわけですからね(笑)。
もし、「絵巻物」に展示されている作品が少なかったら。あるいは、「絵巻物」用の作品の執筆に魅力を
感じなくなっていたら。多分、今回も僕はこの「絵巻物」の閉鎖を断行したでしょう。
しかし、流石にこれほどの量になるともったいない気がしなくもありません(笑)。今後もまだまだ書き
たいものがありますし・・・というわけで、思い切ってこれを機に「設定が食い違うのが怖い病」を克服
しようと思い立ちました(笑)。そうです、この話を今回書くことに決めたのは、この“呪縛”から逃れる
ことができた・・・という記念の意味合いを込めてのことだったんです。
もちろん、これからもなるべく本編との整合性には気を遣いたい(あからさまな嘘は避けたい、ということ
ですよ(笑))と思っていますが、今までのように“遠慮して踏み込まなかった部分”というものは今後は
なくそうと思います。・・・って、もしかしてこれは「もっと好き勝手しますよ」ということになるんでしょうか?
(笑←撲殺)
さて、後は恒例の「新出人名/地名の解説」をば(笑)。
アミアン女王、エレさんのお姉さんに相当する人にはミレーユという名前を当てました。これは以前、
まだフェルリさんの名前が明らかになっていなかった時点で僕が彼女に仮に付けていた名前で、
響きが好きだったのでどこかで使おうと思っていたものでした。
精霊の聖地があるという「ヒューレーの森」ですが、この“ヒューレー”はギリシャ語でずばり「森」の意味
です。前作の「WHITE MANE」の登場人物の名前を決めるために色々と調べていた際に見付けました。
なお、作中の国名ですが・・・エレさんの出身地とされているアミアンがイル・カレナス、そして
精霊術士の国ユックルが本編のイル・レネイスにそれぞれ相当します(そして、アミアンを併合したと
いうミガンティクがカルヘーツということになります)。
それにしても、第八話は意味深ですね(邪笑)。今までこの「絵巻物」を読んでくださっていた方ならば、
あれがどこでどんな人たちによって交わされた会話なのかはすぐにピンと来たと思いますが、あれは
当然今後の作品・・・カディオさんの過去話第3弾(「さよなら夏の日」)、及び番外編(「木漏れ日の詩」)
への伏線ということになります。また気ままに書きたくなったものから書いていくと思いますので、
すぐに続編が「絵巻物」に登場する可能性は低いですが、どうか気長にお待ちいただけると幸いです
(ああ、反響が大きいようなら考えますけど(邪笑))。
以上で、「ガーティの夢」あとがきはおしまいです。
機会があったら、ぜひ原曲の方も聴いてみてくださいね!