−あとがき−

「音楽元ネタ小説」第39弾、「春便り」はこれにて完結です。ボリューム的に「漉嵌の間」に掲載するかちょっと迷いましたが、元ネタ曲が素晴らしいので結局本伝扱いに(笑)。結果的に、今までの中で最も短い本伝作品となりました。

この話は、五輪真弓さんの『春便り』という歌を耳にして思い付いた話でした。
この曲との出会いは古く、遠く僕の小学生時代まで遡ります。当時車の中で母がかけていたカセットテープにこの曲が入っていたのですが、どうやらダビングを失敗したらしく(笑)、最後の部分が延々とループした状態になっており、子供心にも「変な曲だなあ」という印象が強く残っていました。
それから早二十年以上、ひょんなことからこの曲のことを思い出してiTunes Storeで検索・入手して聴いてみたところ、かなり僕好みの曲であることが判明しまして、その素晴らしい歌詞から即座に「これはアグリナの話を書かなければ!」ということになりました。執筆時間は僅か2時間足らず、やはり「思い立ったときに書く」のが一番効率が良いようです(大笑)。

お元気ですか 久しぶりにペンを執りたく思いました
私が北に来てから二年 凍てつく寒さにも慣れました

リラの花は春を告げる花
淡紫のインクで綴りしたためる貴方への便りです

雪山抜けて流れる川に 空の蒼さが揺れています
私は今日春の衣替え 白い木綿のスカート出しました

遠くで響く連絡船の汽笛を聞けば
忘れかけてた故郷へ思いが走ります

春一番が吹き荒れる日は 風邪に気を付けてくださいね
だけど貴方は引いたとしても 鬼の霍乱と笑い飛ばすでしょう

リラの花は私の心
離れて暮らす貴方に送る春便り それではこの辺で


「リラの花」とはライラックのことで、日本では札幌など北海道が有名ですね。今回の話では、それをオノトア島の「島花」として登場させています。その他にも、話の構成は基本的にこの歌詞を踏襲したものとなっています(「雪山抜けて〜」から温泉宿の、「鬼の霍乱〜」から“何とかは風邪引かない”というエピソードが出てきています(笑))。

それにしても・・・この話を書き上げ、改めて読んでみて思いましたが、見事に“ネタ振り”だらけになりましたね(邪笑)。
特に、文中に登場している「工房」と「見覚えのない冬軍五人」の話については、既に構想があり十中八九「漉嵌の間」で形にする予定です。他にもまだ固まっていませんが、ヴァータの姉ヴァーユ、秘境の温泉宿、更にはルイの子竜たちやアグリナの里帰りのエピソードも今後考えていきたい内容です。
この年代の内容は今まで全て合同誌での発表という形にしてきましたが、今後はこうして「絵巻物」の中での増えてきそうな感じです。うーん、これは新しい「シリーズ」としてまとめるべきでしょうか(邪笑)。

なお、今回の収穫の一つに、いくつかの“未来話”に登場していたマシェルとアグリナの息子であるルイの言動をある程度描写できた、というものがありました。同じく今回名前だけ登場しているアリア(こちらはエレとカディオの娘)も基本的に今まで名前のみの登場だったので、今後どこかできちんと活躍させてみたいですね。この年代の竜術士もルイ(竜王・火)、アリア(水)に加えてキール(地)と段々メンバーが揃ってきましたので、その生活ぶりも書いてみたくなってきました(笑)。

以上で、「春便り」のあとがきはおしまいです。
機会がありましたら、原曲を聴きながら読んでいただけると、きっと情景が思い浮かぶと思いますよ!