−あとがき−
「音楽元ネタ小説」第30弾、「Message From The Wind」はこれにて完結です。気が付けばこの
「絵巻物」シリーズも30の大台に乗ったわけですが、その節目を飾るのは「郵便組合」の起源に
まつわる話となりました。
では、ここからは元ネタになった曲の解説と内容の補足をしていきたいと思います。
この小説は、エレクトーンプレイヤー中村幸代さんの『Message From The Wind』という曲を聴いて
イメージを膨らませていった話でした。タイトルを直訳すると「風からの伝言」ということになりますが、
その名の通り風のささやく様子をイメージした爽快感に溢れた曲になっています。コーセルテル
本編では「郵便組合に入る資格は空を飛べること」とあるので、まさに空から現れた郵便配達員から
手紙を受け取る際のイメージにぴったりの題名と言えそうです。
この話で書いてみたかったのは、もちろん「郵便組合」のことでした。
竜の里のことを初めまだまだ謎の多いコーセルテル本編ですが(笑)、その中でも「郵便組合」には
「手紙の出し方」を初め色々と分からない部分が残っています。そして、中でも一番の謎は「それは
世間一般(=コーセルテル外に広がる人間の世界)に認知された存在なのか」ということでした。
仮にもコーセルテルや冬の都、果ては竜の里(光竜の里から手紙が届く話がありましたし、また里への
竜術士からの報告書も郵便で届けられているはずです)にも手紙の配達に来ている以上、配達員は
そうした場所のことも知っていることになりますが・・・おいそれとそのことが世間に漏れたら困り
ますよね(笑)。そういった意味で、もしかしたらこの「郵便組合」はあまりメジャーな組織ではない
可能性もあり、「じゃあ、実際はどんな組織なんだろう・・・」という想像を始めたところから、この話が
膨らんでいったというわけです。
なお、この話はアクセルとシーヤが再会する場面で終わっています。この後、二人がどうやって「郵便
組合」を立ち上げていったのか。・・・その話は、また機会があったらこの「絵巻物」本伝、あるいは
「漉嵌の間」にてお送りすることにいたします(邪笑)。
ちなみに、これはあくまで僕自身の勝手な想像ですが・・・この「郵便組合」という名前で呼ばれている
組織には、実際には表裏二つの“顔”があるんじゃないかと思います(笑)。表の顔は、もちろん普通に
人間たちの間での手紙を運ぶ組織(世間一般で「郵便組合」と呼ばれているのはこちら)ですが、その
裏に本編で登場している「竜や魔獣、精霊たちを対象にした郵便」を担当する部門があるのでは
ないか、と(こちらは組織の規模も小さく、また極秘の存在のはずです。月や冬の都といった場所への
配達の必要がある以上、構成員も人間はほとんどいないはずですし)。
恐らく、発足当初の「郵便組合」は単純な一つの組織だったはずです。それが、二度のコーセルテル
崩壊に伴って竜や魔獣といった諸種族が衰退するにつれて、そうした人々を対象にしていた南大陸の
郵便制度も徐々に縮小され、結果的に今のような状態・・・すなわち「郵便組合=人間の間での郵便を
運ぶ組織」になっていったのでしょう。
最後に、今回の登場キャラクターのネーミングについて。
主人公のアクセルは、その昔に読んだジュール・ヴェルヌさんの『地底旅行』の主人公の名前から取り
ました。科学技術が発達している昨今では、過去に書かれたSF小説の大部分は荒唐無稽なものと
して苦笑いをしてしまうこともしばしばですが、この『地底旅行』はまだよく分かっていない地底のことを
題材にしていることもあって、子供ながらに心を躍らせながら読んだ鮮明な記憶があります(終わり
方が中途半端なのが大変残念です)。
もう一人の主人公であるグイ族のシーヤ。これは南米チリにある天文台の名前で、高山地帯に住む
種族の特性を表している気がして選びました(ちなみに出身地のカンパナスも同じくチリの天文台の
名前です)。
以上で、「Message From The Wind」のあとがきはおしまいです。
機会がありましたら、ぜひ原曲を聴きながら読んでみてくださいね!