不死    2 

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その後のフェスタの二千年に亘る繁栄と、二度のコーセルテル崩壊。そして、細々と続けられてきた
竜と竜術士たちの営み。コーセルテルの中央湖は、雨の日も風の日もその栄枯盛衰を常に見守って
きた。
父の言い付け通り、必要以上にこの地に住まう者たちとの接触は避けてきた。時には友と呼べる者も
現れたが、その全てがライナリュートを遺して旅立っていった。初めのうちはそれに打ちのめされる
こともあったが、千年二千年と時が経つにつれて、寂しさや悲しさを感じることも次第になくなった。
そんなある日。朝靄の立ち込める湖畔に、一人の少年が姿を見せた。
コーセルテルでは見慣れない服装に黒い短髪、実直そうな焦げ茶の瞳。携えたリコーダーの調べは
優しく温かで、音楽に接すること自体が稀なライナリュートが、その虜になるのには、そう長い時間は
かからなかった。
思えば変化の少ない、文字通り他人と言葉を交わすことすら滅多にない、守護精霊としての日々が
続いている。いつしか、ライナリュートは毎朝の少年の来訪を待ち侘びるようになっていった。

「いつもながら、見事なものだな。」

ある朝、思わず口にした一言。その声に、ライナリュートを見ることのできなかったはずの少年が、
驚いた顔で振り向く。

「そうか・・・遂にこの日が来たか。いや、めでたいことだ。」

これが、ライナリュートの新しい“人生”の始まった瞬間だった。


はしがき

旧「日記帳」の『朝霧』という作品のエピソードを基に、ガウスとライナリュートのその後について書いて
みました。この後、竜都に戻ったガウスはトレントの片腕となり、生涯王国のためにその力を尽くす
ことになります。