ヒカリのキセキ
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ヒカリのキセキ
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果てしなく、無限に広がる大空
生き物のように…
いや生き物以上に、その姿・形を変え、
全てを包み、全てを統べる、永遠の支配者
凄まじい光と音と共に降り注ぐ雷
黒い雲の狭間から、時々見え隠れする、白い光の筋
美しい…しかし、恐ろしい輝き
コーセルテルの、一片の曇りもない青空が
漆黒と呼べるほど黒い雷雲に覆われてから
どの位の時がたったのだろう…
*
コーセルテルでは、ずっと雷が続いていた
今日で鳴り始めてから3日目である
こんなことは、今まで一度も起きたことはなかった
まるで、神のいたずらのように、雷雲が漂っているのだ
コーセルテルの人たちが
「このまま鳴り止まないのではないか」
と、思い始めた頃の話である
コーセルテルのほぼ中心に位置し、周りが森で囲まれた
小高い丘の上にポツンと立っている、木と一体化した遺跡
この遺跡が竜術士マシェルと子竜たちの家になっている
いつもは元気よく家の周りで遊んでいる子竜たちの姿が見えない
その子竜たちは、家の中から真っ黒な空を眺めていた
「はーあ、いつになったら晴れるのかなー」
「仕方ないでしょ 天気はどうにもできないんだから」
「それはわかってるけどさぁ…」
退屈そうに足をぶらぶらさせながら外を眺め、ぶつぶつと愚痴る風竜サータ
そのサータの愚痴に、地竜アータが返事をする
サータだってわかってはいるが、ぼやかずにはいられない
この雷のせいで、外で遊ぶことができないのだから
風竜は竜のなかで一番、自由を好む種族だ
この歳ならば、外で遊びたいという気持ちが誰よりも強いのである
それに比べ、地竜は読書などの室内でできるものを好む
アータは、雷のことなど気にせずに、読書や勉強に勤しんでいた
「雷ゴロゴロ、そればーっかり」
「退屈だよねー…」
そんなサータの横で、同じように空を眺めていた
水竜マータと木竜タータもぼやきはじめる
サータほどではないものの、退屈を感じ始めている
「暇すぎるわ、何かすることないのかしら」
「2人はさっき、たくさん絵本をもってきてたじゃん」
「もう読み終わっちゃったのー」
2人が座っている椅子の下には、読み終えた絵本が積み重なっていた
絵本だって、一度読めば飽きてしまうものだ
以前に何回も読んでもらったことがあるので、なおさらだ
そんな子竜たちをからかうように、また空が光り始める
「雷って、なにが楽しくて光ってるのかな」
「別に遊びで光ってるわけじゃあ…」
「でも、迷惑にはかわりないわよね? タータ」
「んー、そうだねー」
マータとタータは雷が苦手なわけではない
しかし、小さい子竜ならば、雷には少なからず恐怖心をもっている
だが、ひっきりなしに落雷があるため、
みんな、光にも音にも慣れてしまっている
今では光るたびに外に出て遠くを眺めるくらいだ
火竜ハータは、その音にすら気づかずに、すやすやと寝息を立てている
いや、ハータ自身が鈍いだけかもしれないが…
「いいから、おとなしくしていろ
あと、雷がなっても外へ行くんじゃない
頻繁に落雷が起きているのだからな」
「「はーい」」
暗竜ナータの言う事に声をそろえて返事をする
このセリフも何回目だろうか
返事はするものの、1時間もしたら誰かが外へ見に行ってしまう
それをまたナータが止め、このセリフを繰り返すのだ
「ぴかぴかごろごろー♪
あ、また光ったよ! ほらっほらっ」
「「…はいはい、よかったね…」」
浮かない顔をしている子竜たちの中で、
1人だけ嬉しそうにしているのが光竜カータである
鳴り続ける雷に飽きもせず、ニコニコと空を眺め続けている
以前は雷は苦手だったのだが、マシェルに雷のことを教わってからは
雷がとても好きになり、今では雷が鳴るのを楽しみにしていた
そんな暇をもてあましている子竜の後ろで竜術士のマシェルと
地竜術士のランバルスが難しい顔で話をしていた
『やっぱり、僕の家にある本はこんな天気のことは書いてないですね』
『俺の家の本にも、一切書かれていなかったな…』
『そうですか、地下書庫の本にも書いてないなんて、困りましたね』
2人はコーセルテルの天候について調べていた
具体的な解決方法や、どのくらいこの天候が続くのかを知っておく必要があるからだ
地竜術士のランバルスは、知恵の竜とも呼ばれる地竜の竜術士だ
地竜術士家には先代の術士たちが残してきた大量の本が置いてあるのだが
その本の中にも書かれていないということは
このコーセルテルで、初めて起こった異常気象ということだ
『ふぅ…困ったなぁ…』
黒一面の空を見上げながら、ため息をつくマシェル
子竜たちも同じように空を見上げてはため息をついている
どこまでも続く黒い空、このまま晴れないのではないか…
そんな気持ちをあざ笑うかのように、また音を立てて光が空を走っていった