ヒカリのキセキ      3 

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「あ、あれ マシェルたちじゃない?」

一人外を眺めていたカータが、
森のほうからかけてくる人影にいち早く気づいた

「あ、ほんとだ! マシェルたちだ!」

マシェルたちが慌ててこちらへかけてくる
そんな姿を見て嬉しくなった子竜たちは、玄関へと向かっていく
玄関の扉を開けると、走ってくるマシェルたちに手を振った

「マシェルー!おかえりなさいー!」
『あ、みんなー ただいまー!』

そのときだった
ナータが何かに気づき、ぱっとマシェルの腕から地面に降りると
服のすそを思いっきり引っ張った

『どうしたの? ナー…うわっ!』
『どうしたマシェル? …うおっ』

マシェルとランバルスはもつれ込んで芝生の上に転がる
次の瞬間、さっきまで立っていた所に雷が落ちた
あたり一面に草の焦げる匂いが立ち込める
それを見て、マシェルたちの顔から血の気が引いていく
ナータが気づかなければ、雷が直撃していたのだ

「「マシェル!」」

玄関から見ていた子竜たちが慌てて外へ飛び出した
今にも泣き出しそうな顔でマシェルのほうへ駆け寄っていく

『わっ みんな、出てきちゃだめだってば!』

マシェルが慌ててみんなを戻るように促す
しかし、子竜たちはそのままマシェルに向かって走ってくる
だが、カータだけは、道の途中で止まってしまった

『…カータ?』
「カータ? どうしたの?」

マシェルと子竜たちがカータを見つめる
カータはワナワナと肩を震わせていた
みんなの声にも耳を貸さず、
涙を流しながら、空を覆いつくす雷雲を睨みつけた
光竜なのに、見ていることしかできない自分の情けない姿
そして、雷に対しての怒りが、カータの中で爆発した

「精霊さんには下が見えてないのっ!?
 どうしてみんなを困らせるんだよーーーー!!!」

そのとき、空が光り始め、雷が光と音と共に、カータに向かって落ちてくる
カータはその光の睨みつけたまま動かなかった

『…っ カータ!』

マシェルが飛び起きて、カータに駆け寄る
かばうようにカータを抱きしめた
しかし、雷はもう目前に迫っていた

「「カータ!マシェル!!」」

雷が、カータとマシェルに当たってしまった
その場にいた誰もがそう思った…

次の瞬間、あたりは眩い光に包まれる
全てを、白一色に染め替えていった

「…マシェル …マシェル」
『…カータ?』
「…お願い ボクに…力を貸して」

やがて、白で染まっていた世界が元の色を取り戻し始めたころ
ランバルスや子竜たちは恐る恐る目を開く

『い…今のはなんだったんだ…?』

そこにはマシェルとの同化術によって
青年へと姿を変えたカータが立っていた
短い金色の髪をなびかせ、青い瞳で空を睨みつけている
その瞳は、恐ろしいほど冷ややかな怒りに満ちていた
空へのばしている左手の先には
まるで時間が止まったかのように
ピクリとも動かない雷の光があった

ランバルスとナータがぼそぼそとつぶやく

『この力は…ナータの力の暴走に似ている…
 あの時も、あたり一面が黒に染まっていた』
「…カータの力の暴走…なのか…?」

ナータは感じ取っていた
あたりに満ちている、とても大きな力の流れを
手を動かすたびに、呼吸をするたびに、感じ取れる
ナータの力と対を成す力の存在を
このときのカータは、とても大きく、恐ろしく見える

「人を傷つけ、苦しめる光なんて、要らない
 そんな光は…ボクが消し去ってやる」

そう呟くと、カータの左手が光を放ち始める
あたりの張り詰めた空気が、一気に開放されていく
すると、左手の先で止まっていた雷が徐々に姿を変えていく
姿を変えた雷は、まるで光の炎のように燃え盛っていた
カータが右手を振り上げると、またもや空が唸り始める
凄まじい音をたて、数え切れないほどの雷が降り注いだ
その雷は、次々と光の炎に吸収されていく
やがて、雷は収まり、両手の先には巨大な光の炎が浮かんでいた
その炎は太陽と似た光を放ち、あたりを昼間のように照らしている
カータが手を下ろすと、その光の炎は徐々に小さくなり
数分もすると、跡形もなく消え去っていた
消え去った光の下には、マシェルとカータが倒れていた
みんなが慌てて2人に駆け寄った
ランバルスが2人を抱き起こし、状態を確認する

『…大丈夫だ 2人とも眠っているだけだ』

その場にいる全員が安堵のため息を漏らす
ランバルスがマシェルを、アータがカータを抱え
家の中へ戻っていった


  *


ベッドで眠っていたマシェルがゆっくりと目を覚ました
倒れてから、すでに数時間がたっていて、空に漂っていた雷雲は消え
満天の星達が輝く、美しい夜空に姿を変えていた

『…うーん』
『お、やっと目を覚ましたか』
『あれ? ランバルスさん ボクは一体…』
『覚えてないのか? お前とカータは雷を操ったんだよ』
『…雷を!!?』
『おう 俺の考えだとな、あれは、カータの術の暴走だと思うんだ』
『術の…暴走ですか』
『術の暴走と、マシェルの同化術がうまく重なり合って
 雷を操ることができたのではないかとな』
『そうですか…』
『まぁ、結果オーライということだな!』

他人事のように笑っているランバルスに釣られて
マシェルもいつの間にか笑顔になっていた

『お前達、もう入ってきてもいいぞ』

ドアのほうに声をかけると、子竜たちが部屋へ飛び込んでくる
そのままマシェルの寝ているベットへ飛び込んでいった

『みんな、心配かけてごめんね 僕はもう大丈夫だから』

一人一人の頭を優しく撫でるマシェル
ふと、誰かが足りないことに気がつく

『あれ?カータは?』
『…あれ?さっきまでいたんだがな』

いつもなら一番に駆け寄ってくるはずのカータがそこにはいなかった
ドアのほうを見ても、その姿はない

『どこいったんだろう…』

そんなカータはマシェルよりも先に目を覚まし、
外で数え切れないほどの星たちと、満月を眺めていた
心地よい夜風にうたれながら、芝生の上に座っている

「やっぱり、光は優しい光じゃないと」

満面の笑みで満月に手を振るカータ
その瞳には、先ほどとは違い、優しさに満ちていた

雷の恐怖から開放されたコーセルテルを祝福するかのように、
白い満月が煌々と輝き、優しい光でその大地を包み込んでいた


おしまい