ヒカリのキセキ
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雷雲に覆われてから4日目
今日も朝から雷が鳴り続けている
コーセルテルの人たちの気は滅入っていた
コーセルテルの人たちは暑さが苦手で、夏の間はいい季節とは言えない
そんな暑い夏が終わり、過ごしやすい秋のかわりにこんな異常気象が訪れてしまった
家を出ようにも、あちらこちらで頻繁に落雷が起きているため、
なかなか外には出られないし、実りの時期を迎えた作物の収穫もままならない
住人達は、雷雲が過ぎ去ってくれるのを待つことしかできなかった
そんな日の午後、恐れていたことが起こってしまった
『マシェル! まだできないのか!』
『は、はい! ちょっと待ってください!』
迎えにきたランバルスがマシェルを急かす
コーセルテルは大騒ぎになっていた
とうとう…落雷による被害者が出てしまったのである
獣人の村の男がこの天気に耐えられなくなり、
畑へ作物の収穫に行ってしまった
そして…その鍬を振り上げた瞬間に、雷が直撃したのである
その男は急いで運ばれ、傷や病気の治療を得意とする
木竜術士のカディオの治療を受けているのだが、
それがあまりにも酷いため、同じ木竜術が使える
マシェルに救援を頼むという話になったのである
『あっちにはもうメリアさんがいるからな、同調術で行くぞ』
『わかりました タータ、ナータ 行くよっ』
マシェルに呼ばれた子竜たちがあわただしく玄関へかけて行く
両手に術道具と薬草を持ち、忘れ物がないように確認をする
残された子竜たちは不安そうな目でマシェルを見つめた
『…大丈夫、すぐ戻ってくるよ 絶対に外に出ちゃだめだからね!』
そう言い残すと、子竜たちを連れて出て行ってしまった
みんながいなくなってしまった家は、少しガランとしている
子竜たちに、寂しさと不安が押し寄せてくる
「マシェル…大丈夫かなぁ…」
「だいじょうぶだよ 同調術だし、ナータも一緒だしっ」
不安そうなみんなをサータが元気づける
こんな急な事態でも、サータは笑顔を絶やさなかった
暗竜ナータの次に大きい、2番竜のサータ
自分が怖がっては、みんなを不安にさせてしまう
そんな思いを心に秘め、笑顔を振りまいている
そのおかげで、みんなに少しずつ笑顔が戻ってきた
しかし、カータだけは複雑な顔をしていた
今までは楽しそうに雷を見ていたのに…
「カータ、どうかしたの? お腹でも痛い?」
「う、ううん なんでもないよ」
ハータが心配そうに話しかけても、空を眺めるばかりだった
カータは空を眺めながら、
マシェルに教えてもらったこと思い出していた
『いいかい?カータ 光っていうのはね、
みんなを優しく包み込んでくれるものなんだよ』
「みんなを…?」
『そうだよ 真っ暗な部屋の中に、一人で残されたら、とっても怖いでしょ?』
「う…うん」
『でも、一つ 光の玉があるだけで、ほっとする それが光の優しさなんだ…』
「そっかぁ…そうだね!」
『だから、光は怖いものじゃない 怖がっちゃいけないんだ』
そうマシェルに教えられたカータ
だから、光は怖くないものだと思い込んでいた
けれど、今はその光がみんなを困らせている
自分の思っている光とは違う光がある事を知り、困惑していた
「雷は光の精霊さんのダンスって聞いたけど…
落ちてくる光はみんなを困らせてるんだよね…」
色々な考えが交差する中で、カータはあることに気づく
「そうだ! 光なら、光竜術でどうにかできないかな!」
ぱあっと顔を輝かせ、玄関へ走っていく
もちろん、光竜術で落ちてくる雷を操るためである
それを聞いていたアータが慌ててカータを止める
「まって、カータ どこ行くの?」
「どこって…外だけど?」
「外って…マシェルに出ちゃダメだって言われたばかりでしょ」
「そうだけど、あの雷を光竜術でどうにかできないかなぁって」
「…カータには無理だと思うよ」
「どうして? やってみないと…」
「あのね、カータ 雷を操るのはとっても難しいって本に書いてあったんだ
大人の竜でも、無理に操ろうとはしないんだって」
「…」
おとなしく窓のほうに戻るカータ
子竜たちはほっと胸をなでおろす
カータは普段はおとなしいのだが、
何かを始めると、それが行き過ぎてしまうことが多い
それがいいところでもあるのだが…
「いくら精霊さんたちの仕業でも、みんなを困らせるのはよくないよっ
ボクの力で、どうにかできればよかったのに…」
光を司る光竜なのに、何もできないことに一人苛立ちを感じ始めるカータ
みんな、それを黙って見ているしかなかった
*
カディオの手伝いを終えたマシェルたちは
また森を通って家に戻っていた
『なぁ、マシェル お前がぱぱーっと光竜術で雷を消せばいいんじゃないのか?』
『無茶言わないでくださいよ… 雷は操るのがとても難しいんですよ?
光竜術士のモーリンさんと成竜のラスエルさんでさえやろうとしないのに』
『む、そういえばそうだな…』
『…知恵の竜の術士なのに、知らなかったんですか?』
『ハハハ…ほっとけ』
話しながら、森の中を歩いていると、マシェルの家が見えてくる
マシェルは家が見えると、ほっとため息をついた
それと同時に、子竜たちは大丈夫だろうかとソワソワし始める
一刻も早く家に行きたいのだが、家までは木も何もない丘を登るしかなかった
『あっちゃー…雷は木とかに落ちやすいからなー 俺たちも危ないかもな』
『それ…冗談になりませんよ』
「…(睨」
ほんの少しの冗談のつもりだったのだが
ナータにものすごい目つきで睨まれ、慌ててフォローをいれる
『あー、ほら、まぁ、だいじょぶだろ いくぞっ』
『あ、待ってくださいよ ランバルスさん!』
2人は子竜たちを抱えながら、慌てて丘を登り始める
その上空では、またもや雷がなり始めていた