resting place 1     

resting place


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――――――――――コンコン。
小さなノックの音に、カディエは眼を落していた魔導書から顔を上げた。

「お入りなさい。」

魔導書を机の上に置き、部屋の入口に目を向ける。開いた扉から入ってきたのは、末妹のティッキーだった。思いつめた表情のティッキーは、カディエの机の前にやってくると、俯きながらこう言った。

「お姉ちゃん・・・私、やっぱり分からなくて・・・。」
「・・・・・・。」
「色々な人に、話を聞いたの。調べられるだけの本も調べてみたし、友達にも訊いてみたけど・・・。・・・お姉ちゃんは、知っているんでしょ?」
「さあ・・・どうかしらね。」
「・・・・・・。・・・お姉ちゃん?」

途中から眼を閉じていたカディエは、ここで溜息を一つついた。椅子から立ち上がると、傍らの壁に立てかけてあった杖を手にする。部屋に設えられていた大きな窓の前で振り向いたカディエは、不服そうな顔で自分を見つめていたティッキーに向かって、にっこりと微笑んだ。

「いいわ。いらっしゃい。・・・久しぶりに、外で話しましょうか。」
「じゃあ・・・!」
「ええ。教えてあげるわ・・・私なりの、解釈をね。」
「はい!」

瞳を輝かせ、勢いよく頷くティッキー。次の瞬間、開け放たれた窓を通って、二人の姿は遥か上空へと消えていった。


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