友達
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「よう。何見てるんだ?」
第二の竜都、コーセルテル。中央湖の畔に広がる町並みの外れには、小さな楽器屋があった。その
ショーウインドウの前に佇んでいたクレオは、かけられた声に振り向いた。
晴れて竜術士と認められ、中でも優秀な者はこのコーセルテルで子竜の育成に携わることになる。
住む家の手配に始まり、この地に移り住むための手続きの数々。それがひと段落したこの日、
クレオは初めてコーセルテルを自由に散策する時間に恵まれたのだった。
「楽器が珍しいのか?」
クレオの背後に立っていたのは、一人の精悍そうな表情の男だった。背には、何かの大きなケースを
背負っている。
クレオに並んで立った男が、ショーウインドウを覗き込む。
「もしかして、あんたも・・・何か楽器をやってるのか?」
「ああ・・・いえ、その・・・。」
村には、小さな集会場があった。その片隅に置かれていた、古ぼけたオルガン。
ろくに遊び相手もいなかったクレオは、小さい頃からよくそこに行ってはオルガンを触ったものだった。
「ふーん・・・。」
慌てて小さく頷くクレオ。思案顔になった男は、しばらくすると不意ににやりとした。そのまま、クレオを
手招きする。
「ついて来いよ。」
「え? でも・・・」
「いいから。」
片目を瞑った相手は、そのまま踵を返すと楽器店の中へと入っていった。しばらくの間迷う様子だった
クレオは、ややあって男の後を追ったのだった。