ふるさと
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「・・・ゆめを見てたの。そしたらね、クレオと・・・クレオのおうちが出てきたんだよ。」
「へえ。・・・そういや、オレもこいつの故郷の話は聞いたことないな。」
(・・・・・・)
徐々に、意識が戻ってくる。
耳元で、誰かが話している。一人は大人の、そしてもう一人はまだほんの子供の声だ。
「お山がいっぱいあってね。一年じゅう雪がとけないんだって。」
「万年雪? そりゃまた。」
「それにね、氷でできた川もあるんだって! 冬はすごくさむいんだって・・・」
「ん・・・」
『!』
ゆっくりと目を開ける。話し声の通り、ベッドの傍らには二人の人物がいた。
ベッドに腰かけていた女の子。夢の中で見たものと寸分違わない、鮮やかな水色の髪を具えた
相手は、次の瞬間両目に涙を溢れさせるとクレオに勢いよく抱き付いた。
「クレオー!!」
「ティア・・・」
「よかった・・・ほんとに、よかった・・・。このまま、死んじゃうのかと思った・・・!」
「うん・・・。ごめん、心配かけちゃったね・・・。」
自らの腕の中で泣きじゃくるルクレティアを、クレオは優しく抱き締めた。
そんなクレオに向かって、ベッドの傍らに立っていた男・・・火竜術士のリカルドが片目を瞑ってみせる。
「よ、お帰り。・・・久しぶりの故郷は、どうだったよ。」
「リカルドさん・・・」
やはりあれは、夢だったのだ。
クレオが育った故郷・・・そして、親しかった人々はもう、この世にいない。そして自分は、この
コーセルテルで第二の人生を歩んでいる。・・・それならばせめて、自分が忘れないように
するだけだ。
僅かに涙を滲ませたクレオは、それでもリカルドに向かって微笑み返した。
「ええ。・・・楽しかったです。」
はしがき
『夏の手紙』シリーズに登場する水竜術士、クレオの故郷について書いてみました。
悲惨な過去を持つキャラクターが多い竜術士ですが、その中でもクレオのものは折り紙つき。シリーズ
中では印象の薄い彼ですが、いつか「絵巻物」本伝でも彼を主役にした話を書いてみたいものです。
BGM:『The Rainbow Connection』(カーペンターズ)