エカテリーナ        4 

(4)手紙
・・・時々、みなさんにエカテリーナさんからの手紙をお届けすることがありますけど、あれって何が書かれているんですか?
なんだ、気になるのか?
消印を見ると、世界の色々なところから出されているようですし。
ああ、実はな。コーセルテルを動けない俺たちに代わって、外の世界のことを色々と調べてもらってるんだ。
外の世界のこと・・・ですか?
そうだ。お前さんには話しても構わないだろうが・・・邪な目的でコーセルテルを目指す奴らがいないか、見張ってもらってるのさ。エカテリーナさんは風竜の血を半分以上引いているからな、世界じゅうを旅するのに向いているしな。
なるほど。確かに、それは外の方の仕事になりますね。・・・マシェルさんは?
僕のところに来る手紙には、特に難しいことは書いてありませんよ。自分は元気だから心配しないで・・・とか、旅先で見かけた面白いものの話とか・・・。
へえ。
それなのに、ボクには滅多に手紙をくれない・・・。
それは・・・きっと、カディオさんやマシェルさんのことは、自分がコーセルテルに連れてきたから人一倍気にかけているんだと思いますよ。
・・・実の息子よりもかい?
そうやってヘソを曲げるなよ。・・・それは、一番信頼されてるってことじゃないか。「便りがないのはよい便り」とも言うし・・・大体、帰ってくるのは必ずお前のところなんだろう?
・・・まあ、分かってはいるんだけどね。
そう言えば・・・当のエカテリーナさんは、最近は帰ってきていらっしゃるんですか?
どうなんだ、ミリュウ?
最近は滅多に帰ってこないなあ。・・・マシェル君がこっちに来たばかりの頃は、季節ごとには顔を見せてた気がするけど。
そう言えばそうですね。
(立ち上がって)お話の途中ですみませんが、私はそろそろ仕事に戻らないと・・・。
あ、はい。お忙しい中ありがとうございました。
そうだ、郵便屋さん。今日は、僕らへの手紙はないんですか? もしあるなら、ここで渡してもらえれば、お仕事が楽になると思いますけど。
あ、いいえ・・・確か、今日は皆さんへの手紙はなかったと思いますが・・・(配達鞄を覗き込んで)あれ!
ん?
どうされました?
見てください、これ・・・(鞄の中から一枚の落ち葉を取り出す。そこには、「今度は私も呼んでね」とエカテリーナの筆跡で書かれている)。
ほう。洒落たことをするもんだな。
おかしいな。朝、出てくるときには確かに入っていなかったのに・・・いつの間に。
ふふふ、母さんらしいな。ね、マシェル君?
ええ、兄さん!

はしがき

「コーセルテルの座談会」第1回、『エカテリーナ』はこれで終了です。
この「座談会」というシリーズは、当サイトが20000Hitを達成したときの記念企画として一般から
リクエストを募集したものだったんですが、気が付けば今のカウンターは既に40000を超えています。
・・・つまりその、一年近く放置していたわけでして(笑←撲殺)。リクエストされた崎沢彼方さんには、
大変お待たせをいたしまして申し訳なく思っております(平謝り)。

で、執筆が遅れた原因なのですが・・・一つは、お題の「エカテリーナさん」について、僕の中で中々
イメージが湧かなかったことです。本編中ではいくつかのエピソードが伝えられていますが(一部はこの
「座談会」でも出てきていますね)、何となく掴みどころがない感じだったんですよ。・・・ああ、余談ですが
ミリュウさんについてもそういう部分がありまして・・・結果的に、僕が書いたものでは彼が出てくる
小説は少ないです(笑)。
そしてもう一つは、こうした「アイコン形式」にしようと思い立ったことです。リクエストをいただいたとき
には、まだ郵便屋さんのアイコンはありませんでしたし・・・マシェルもほぼないようなもの。ということで、
それを補完するのにも時間を取られてしまいました。少しでも臨場感を感じていただけると嬉しいなあ
・・・と思います。

なお、タイトルになっている“TRELA ALEGRE”というのは、この話を書くときにBGMとして流していた
T−SQUAREの曲の名前です。これはポルトガル語で「楽しいおしゃべり」という意味らしく、曲想
からもこの「座談会」という企画からもぴったりだなあ・・・と思っています。今後も、「座談会」を書く
ときはこの曲を聴きながらにする予定です(笑)。
また、エカテリーナさんについての“エピソード”ですが、この「座談会」ではあまり差し障りのないものに
絞って採用しました。それ以外部分については、「絵巻物」の彼女の過去話にて公開予定です(邪笑)。
こちらもお楽しみに!