花火      3   

(3)夏の風物詩
ってわけで、アグリナ。何かないか? 花火にまつわる話。
え、あたし? そうねえ・・・花火といえば、やっぱり「花火大会」かな。
はなび・・・たいかい?
そ。毎年夏になるとね、隣の国で・・・みんなで花火を見るっていうイベントがあったの。よく、母さんと見に行ったのよ。
・・・っていうと、あれか? ザグルークの世界花火大会。
うん、それ。世界一の大会なんだって、母さんは言ってた。・・・出店もたくさんあって、それも楽しみだったのよね〜。
それで・・・その「花火大会」っていうのは、何をするところなの? みんなでその・・・「花火」をするの?
違うわよ。花火にはいろんな種類があってね、あたしたちが手で持ってやるくらいのものから、ハータより大きいのもあるのよ。
え!? ぼくよりも!?
そう。その大きいやつはね、火をつけて空に打ち上げるの。
空に? でも、これも・・・風竜術じゃないのよね?
そうよ。火薬っていう、とっても燃えやすいものがあるんだけど・・・それが爆発するときの勢いで、空に向かって花火の“種”を飛ばすの。
・・・誰かさんみたいだな。
(ナータのヤツ、話はちゃんと聞いてるんだな・・・)
うっ・・・うるさいわね。・・・それでね、その“種”が燃えるときに、さっきランバルスさんが言ってた「いろんな色の光」が出るのよ。その様子が花が咲くのに似てるから「花火」って言うのよね。
・・・どれくらいの大きさの花がさくの?
そうね・・・一番大きいやつだと、大体3000リンク(約600m)くらいの高さまで上がるんだったかな。
ほう、そうなのか? 具体的な数字は初めて聞いたな。
で、花の直径が2500リンク(約500m)くらいだったかしら。
ふえぇ・・・
ふーん。これで、最初に姉ちゃんが言ってた「ぴかっ」についてはわかったけど・・・あとの「どーん」と「たまやー」って、なに?
打ち上げるときにすごい音がするの。それが「どーん」。「たまやー」は・・・まあ、呪文みたいなものかしら。
じゅもん?
そうよ。花火が上がったらみんなで声を揃えて言うの。何でそうなのかはよく知らないけど。
いい加減だなあ・・・
別にいいじゃない、呪文なんてそんなもんよ。それでね、この「花火大会」では、花火が全部で五万発くらい打ち上げられるの。
ご・・・五万!?
もちろん、全部がさっき言った大きさのじゃないけどね。
しかし・・・アグリナ、お前さん随分と花火に詳しいじゃないか。びっくりしたぞ。
母さんがね、花火マニアでさあ。いろんなところの花火大会に行くたびに説明してくれて・・・耳に残っちゃったのよ。
マニアって・・・
こんにちはー。お届けものです〜。
おう、来た来た。すまんな、ウィルフ。
(花火の袋を手渡しながら)約束、忘れないでくださいよ。
分かってる。いつ来てもいいように、ユイシィには言っておくから。

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