Dream of Dreams        4 

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気が付くと、明良は緑の芝の上に立っていた。彼方には緑の草原が広がり、そこかしこに満開の桜の
木があるのが目に付いた。

(ここは―――――)

「おい!」

不意に背後からかけられた、棘のある声。振り向いた明良の目に映ったのは、三つの人影だった。
声の主はその中の一人、長い黒髪をツインテールにしてまとめた、まだ小学生くらいの女の子だった。
パターを握り締め、苛立たしげな様子でこちらを睨み付けている。

「もしかして・・・僕のこと?」
「そうだ、そこのお前だ! いつまでグリーンの上に突っ立っているつもりだ!!」
「もう、クーちゃんてば。そんなに邪険にしないの!」

傍らに立っていたポニーテールの少女が宥めるように言うと、明良に向かってにっこりと笑いかけた。

「こんにちは! あたしは、エリカといいます。あなたは?」
「ああ・・・僕は明良。・・・えっと、ここは―――――」
「パンヤ島に散らばるコースの一つ、ピンクウインドの18番ホールです。・・・もしかして、新しく招待
された人ですか?」
「うん。・・・どうやら、そうなるかな。」
「そうだったんですね。・・・パンヤ島へようこそ、アキラさん!」

グリーン上を吹き抜けていく、爽やかな風。眩しい太陽、輝く白い雲。・・・久しく触れることのなかった、
ありのままの「自然」の姿がそこにはあった。

「・・・どうしたんですか?」
「いや、何でもない。邪魔をして、悪かったね。」
「全くだ!」

吐き捨てるようにそう言ったクーが、明良を押しのけるようにしてパターを構える。苦笑いを浮かべた
明良は、差し出されていたエリカの手をそっと握った。

「ありがとう、エリカさん。・・・それで、僕はこれからどうしたらいいのかな?」
「何だ、新入りだったのか。どうする、エリカ?」
「とりあえず、リベラ村に戻って村長さんに相談しないとね。そういうわけだからキューマ、そのときは
よろしく!」
「・・・分かった。」

それまで一言も発することのなかった、褐色の肌の少年が重々しく頷く。一行について歩き出しながら、
明良は透き通った青空に向かって翳りのない笑顔を向けた。
これから、夢に見たパンヤ島での生活が始まるのだ。
これで良かったのかどうかは、今でも分からないままだ。しかし、決めたのは自分だった。そうだ・・・
自分は、後悔はしていない。

(さよなら・・・みんな)

二度と醒めることのない、夢。それは今、始まったばかりだった。


はしがき

季節柄体調が優れず、ついついこんな話を書いてしまいました。一応フィクションですが、再度入院と
いうことになれば限りなくノンフィクションに近い内容と言えそうです。
主人公・明良の使っていたID“アルテア”を初め、この話にはいくつかの伏線が引っ張ってあります。
今後パンヤの小説を書き続けていく中で、それらを解消していけたらと思っていますので、よろし
ければ今しばらくお付き合いくださいませ。

BGM:『Dream of Dreams』(柏木玲子)