フラッシュバック
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「ほらイトカ、もう泣くなよ・・・」
「・・・・・・。」
「言い出したのはおまえだろう? あれで、良かったんだよ。オレたちが参考にできるのは、この写真
しかなかったんだし・・・ちょっと古いけど、そりゃあ仕方なかったさ。」
泣きじゃくるイトカを抱き締めたまま、チェスターは静かに言った。
トトの“最後の心残り”。それを叶えるために、二人は同調術で遠い昔にトトと生き別れになったという
術士と、五年前に先立った光竜族族長の姿を作り出したのだった。
それを目にしながら、トトはたった今・・・二人の目の前で死んだ。トトの死に顔が幸せそうな笑みを
湛えていたことが、イトカにとっては唯一の救いだろう。
「おじ様・・・最期に、何か・・・」
「ああ、そうだな。内容までは分からなかったけど、あの二人と何か話してたみたいだったな。」
「でも・・・」
「まあな。暗光同調術では、映像しか生み出せないんだし・・・いいじゃねえか、“奇跡”が起こったって
ことでさ。」
「奇跡・・・」
「そうさ。」
片目をつぶったチェスターの様子に、涙を流しながらもイトカは笑顔になった。それを見た
チェスターは、イトカの頭を撫でると踵を返した。
「んじゃ、オレはそろそろ帰るよ。・・・トトの葬式も、誰かに相談しないとな。」
竜術士が死んだ場合、その術士に預けられていた竜たちは皆里へ戻ることになる。・・・コーセルテルで
竜が死ぬということは、余程の事態を除いてまずあり得ないことなのだ。
「新しい術士・・・早く、見つかるといいな。それまでは、何かあったらオレたちに相談してくれよ。」
「ありがとう、チェスター。」
「いいって。オレの唯一無二の親友だった、あいつの育てた竜のためなんだからな。」
暗竜術士の家を後にする。いつの間にか暗くなっていた空を眺めながら、チェスターは心の中で
呟いたのだった。
(これで・・・良かったんだよな? 親父・・・お袋・・・)