TWILIGHT IN UPPER WEST      3 

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「・・・シーダ。・・・おい、シーダ・・・!」

耳元で、自分を呼ぶ声がした。
ウィンシーダがゆっくりと目を開くと、そこには心配そうに自分の方を覗き込むランバルスの姿が
あった。
窓からは、暮れかけた空が覗いている。どうやら、ほんの少しの間眠っていたようだ。口を開こうとした
ウィンシーダは、顔を歪めるとしばらくの間咳き込んだ。

「おい・・・大丈夫か!? そうだ、水を・・・」

枕元にあった水差しを掴もうとして、慌てたランバルスはそれを床に取り落とした。
よく見ると、床には今しがた買って来たと思しき野菜や果物が散乱している。どうやら、紙袋を慌てて
床に放り出した弾みにこぼれ出たらしい。

「どうしたの? ・・・そんな心配そうな顔をして。」

ようやく咳が治まったウィンシーダのこの答えに、ランバルスは心底ホッとした表情を浮かべた。

「いやな、お前があんまり幸せそうな顔をして寝てたもんだからな、俺はてっきり・・・」
「死んだと思ったの? ・・・ふふ、そう簡単には参らないわよ。何せ・・・まだまだやりたいことはたくさん
残っているんですからね。」
「そうか・・・。いや、そうだよな。」

頭を掻いたランバルスは、床一面に散らばった食料品を拾い集め始めた。そんな夫の様子を眺めて
いたウィンシーダは、やがて幸せそうに微笑んだ。
全ては、幻だったのかも知れない。夢の精霊と名乗ったメア、そしてコーセルテルで過ごした一日の
記憶。だが、あれが現実だと信じるのも悪くない。

「ねえランバルス・・・私、夢を見たの。」
「夢?」
「ええ。あのね・・・」


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