Christmas Greetings〜ジークのクリスマス〜        4 

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こうして、ジークリート主催のクリスマスパーティは和やかな雰囲気で始まった。宴もたけなわとなった
頃、ふと窓から外を見やったエディスが呟いた。

「あれ・・・雪が強くなってきたのかしら。」
「そうだね。そう言えば、さっきから風の音がするな・・・と思ってたんだ。」
「あ!!」
「!?」

釣られて、木竜二人も窓から外を見る。ジークリートが不意に大声を上げたのはこのときだった。
びっくりして自分のことを見つめる一同に、ジークリートは大真面目な顔で告げる。

「大事なことを忘れていました。・・・雪がひどくなる前に、庭の畑の様子を見に行こうと思っていたん
です。」
「いいじゃねえか、こんなときに行かなくたってよ。」
「師匠の大事な枝豆や落花生が駄目になってもよろしいのでしたら、放っておきますが。」
「う・・・あ、それは困るな。」

庭の畑で作っているものは、基本的にリュディアの酒のつまみになるものがほとんどだった。そのことを
指摘されたリュディアが赤くなって俯いたのを見て、エディスがくすっと笑う。

「幸い今は、ここに木竜の二人もいます。この冬を無事に乗り越えられるかも、ついでに見て貰うことに
します。さ、行こう・・・二人とも。」
「え・・・ちょっと、ジーク!」
「ああ・・・僕のチキンが!」
「あ、師匠・・・クリスマスのケーキは台所のテーブルの上に出してあります。私たちが遅くなるよう
でしたら、先に食べていてください。」

こう言い残すと、慌てる木竜二人を半ば引きずるようにして、ジークリートは勝手口から外へと出て
いった。その様子を呆気に取られて見送っていたエディスとリュディアは、思わず顔を見合わせたの
だった。


  *


「おい、一体どういうつもりだよ!」
「そうよ! こんな寒い中、無理に外に連れ出したりして!」

吹雪の中、勝手口から外へと突き飛ばされるようにして出されたところで、木竜二人は後から出てきた
ジークリートに向かって食ってかかった。
しかし、何か反論をしてくるのでは・・・という二人の予想とは裏腹に、ジークリートは黙って頭を下げた
だけだった。

「済まん。」
「・・・え?」
「何よそれ。・・・わけが分かんないわ。」
「今日は、クリスマスなんだろう?」
「そうだけどさ。・・・それとこれと、どう関係があるんだ?」

エルフィートはに睨み付けられたジークリートは、目を伏せたまま言葉を続ける。

「クリスマスには、親しい人にプレゼントをあげる習慣があるんだそうだな。エディスさんにそう聞いたん
だが・・・お前たちもそれは知っているだろう?」
「知ってるよ。だけど、何で僕たちがこの冬空の中、外に・・・」
「師匠が、エディスさんに好意を持っているのは知っているだろう? だが、普段は私たちや他の
竜術士たちが一緒にいるだろう。・・・二人きりになれる機会は、滅多にないはずなんだ。」
「・・・・・・。」

戸惑いの表情を浮かべるエルフィートとアルフェリア。そんな二人に向かって、ジークリートはもう一度
深々と頭を下げた。

「師匠を・・・エディスさんと二人きりにしてあげたいんだ。それが、私にできる精一杯のプレゼント
なんだと思う。」
「ジーク・・・。」
「頼む・・・この通りだ。・・・私は、どうされても構わないから・・・今だけでいい。師匠の『夢』を叶えて
やってくれないか。」
「ちょ・・・ちょっとジーク!」
「やめろよ、風邪ひいちゃうよ!?」

ジークリートに雪の上で土下座され、慌てた木竜たちが顔を見合わせる。やがて、エルフィートが仕方なさそうに一つ溜息をついた。

「分かったよ・・・そこまで言われちゃ、仕方ない。」
「そうか・・・ありがとう。」
「た・だ・し!」

立ち上がったジークリートに、盛大な邪笑を浮かべたエルフィートが指を突き付ける。

「クリスマスは、プレゼントを“交換”する日なんだ。・・・だから、僕らからもこんなに師匠想いのジークに
何かを贈らないといけないよね。」
「あ・・・いや、そこまで気を遣わなくても・・・」
「“何でもする”って、さっきジークは言ったよね。」
「あ・・・ああ。確かに・・・」

今度はアルフェリアに詰め寄られ、ジークリートはたじたじとなった。そんなジークリートを尻目に、
邪笑を浮かべた木竜兄妹は目配せを交わし、先に立って歩き出す。

「あ、おい・・・どこへ行く?」
「こんな吹雪の中、外に立ちんぼってわけにも行かないだろ? でも、君の家にも戻るわけには行か
ないんだし・・・とりあえず家の温室に行こう。そこに、ジークへの“プレゼント”があるんだ。」
「温室? ・・・まっ、まさか!?」
「そう、そのまさかよ。・・・果物がたくさんあるから、ジークにはそれを全部味見してもらうことにしよう
かな♪」
「!!」

額を押さえたジークリートは、ここで軽くよろめいた。
実は、ジークリートは果物が大好物だった。しかし、そのことを知っているのは師匠であるリュディアと、
幼馴染とも言える火竜のテラくらい。その他の人たちは、逆にジークリートは果物が大嫌いだと思って
いる。
もちろん、ジークリートが「果物嫌い」を装っているのには訳があった。もし、この木竜二人に自分が
「果物が好きで好きでたまらない」ということが知れたら、それこそ年がら年中この二人の「攻撃」に
晒されることになる。・・・それだけは、何としても避けたかったのだ。

(お・・・温室一杯の・・・果物・・・)

ここでエルフィートとアルフェリアがこんなことを言い出したのは、ジークリートが果物が大の苦手だと
思い込んでいるからである。この場合、二人の目的は単に「嫌がるジークリートに果物を食べさせる」と
いうことにあるため、変な術のかかったものを出される心配もない。そうなれば、術力には定評のある
二人の“作品”なのだ・・・きっと味も一級品に違いない。考えるだけで、眩暈がしそうになる。

「何やってるんだよ! 早くおいでよー!」
「まさか、今更“さっきの話はなし”なんて言うつもりじゃ・・・」
「仕方ない。行くよ・・・」

ともすればにやけそうになる顔を必死で引き締めると、ジークリートは精一杯嫌そうな顔をして二人の
後を追った。


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