夏の手紙      3   

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もやもやした気分を振り払うように、テラは便箋をめくり、四枚目を読み始めた。
四枚目は藤色の便箋。雲のシンボルが描かれたそれには、風竜シゼリアの踊るような癖字が
書かれていた。

風竜シゼリア(崎沢彼方さん作画)

『というわけでね、卒業十周年を記念して同窓会をやることになってね〜。
 幹事はティアがやってくれるって言うし、折角だから久しぶりに集まらない?
 そうだ、サブタイトルは「テラを励ます会」だからね。主役が来ないと、
 多分盛り上がらないと思うよ〜。』


風竜シゼリアはエルとアルの木竜兄妹とはまた別の意味で自由奔放な性格だった。ともすれば
内に籠もりがちな性格のテラは、そのプラス思考をいつも羨ましく思ったものだった。

『それで、同窓会の日取りなんだけどさ・・・再来月の一日あたりを
 予定してるんだ。そう、火竜の月のね(主役を考慮して、だよ?)。
 場所はまだ決めてないんだけど、どこか人気のないところで、あたしたち
 だけでやろうって思ってるんだ。参加者は同期の八人・・・あたしとティア、
 エル&アル、ジーク、それとフィリックとロア。もちろんテラも入れてだよ!
 料理はティアとフィリックがやってくれるって・・・あの二人、多分また
 張り合うよね。飲み物担当はもちろんあの二人。テラ、覚悟しておいた方が
 いいかもね。ふふふ、楽しみだな〜。

 じゃね。できたら早いうちに返事を書いてくれるとうれしいな。

 シゼリア』


(じゃあこの五枚目は・・・)

最後の便箋は四枚目と同じく、シゼリアの筆跡でこう書かれていた。

『追伸

 フィリックとロアの分は、文字じゃないんだ。
 この手紙を読み終わったらね、切手をはがして火竜術で燃やしてみて。
 二人からのメッセージと・・・テラへのプレゼントがあるんだ。
 えへへ、実はあたしも協力したの・・・うまく行くといいな。』


(切手・・・?)

テーブルの上に置いてあった封筒を手に取ると、テラは切手をじっと眺めた。それは王国で流通
している何の変哲もない二十マイナ切手だった。
燃えやすいものを一通りテーブルの上から避けると、台所から一枚の皿を持ち出す。封筒から
はがした切手を皿の中央に置くと、テラは火竜術で火をつけた。
と・・・見る間に炎の中に人影が現れた。それが、二つ。

閃影術・・・!)

閃影術とは、暗竜術と光竜術の同調術の一種。術として開発されたのは最近だが、影像を保存
できる・・・ということで、各種資料の保存法として技術の確立が急がれているものだった。難点は、
暗竜術を使うことのできる術士が少ないことと、音を保存できないことである。

(じゃあ、メッセージって・・・)

テラの疑問に答えるように、影像のフィリックが話し始めた。驚いたことに、この閃影術では音の
保存にも成功しているようだった。

光竜フィリック(崎沢彼方さん作画)

『え・・・と、あー・・・これ、そのまましゃべって大丈夫なの? あ、そう。』

恐らくシゼリアに確認を求めているのだろう・・・影像のフィリックはあらぬ方向を向いて間抜けな
ことを言っている。一方、ロアは暗竜らしくこれまたそっぽを向いて黙ったまま。思わず吹き出して
しまうテラであった。

(シーザ、すごいじゃない・・・音付きの閃影術、できるようになったんだ!)

『や・・・やあ、テラ、久しぶり。今回同窓会のお誘いの手紙を出すってティアに言われたんで、
ぼくらは手紙じゃなくて閃影術で影像を送ることにしたんだ。シーザに手伝ってもらってね、音付き
なんだ・・・実はこれさ、まだ一般には公開してないんだ。そうだよ、これを初めに見たのはテラ、
君ってことになるね。どうだい、すごいだろ・・・』
『・・・用件は?』

昔の通りにすぐに脱線を始めるフィリックに、ロアがすかさず突っ込みを入れる。

暗竜ロア(崎沢彼方さん作画)

『う・・・うるさいなぁ。ずっとだんまりだと思ったらいきなりそれかい?  きっついなぁ。まったく、君も
変わらないんだから・・・まあいいや。
それで、同窓会のこととか、こっちの近況とかは他の人たちが書いてたろう? だから、ぼくらは
傷心のテラにちょっとしたプレゼントを贈ろうと思ってね。大したものじゃないけど、少しでも君が
立ち直るのに役に立ったらいいな・・・と思ってるよ。
それじゃ、またね。同窓会で会えるのを楽しみにしてるよ。そう言えば料理はぼくとティアで
やることにいつの間にかなってさ。今から考えておかないとね。
・・・ほら、ロア、何とか言いなよ。もうすぐ時間だよ?』
『・・・好き。』
『あー、なんつー爆弾発言を・・・』

と大声を上げたフィリックの台詞を最後に、影像は一旦ふっと消えた。


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