夏の手紙          5

 −5−

「・・・!」

気が付いたテラは、突っ伏していたテーブルの上から身を起こした。目の前の皿に目をやると、
切手はもう燃え尽き、影像は消えてしまっていた。

(・・・夢?)

窓の外に目をやると、いつの間にか雨は止んでいた。数ヶ月ぶりの・・・いや、数年ぶりの抜ける
ような青空。強烈な日光が庭先の水溜りに反射して、眩い反射が目に入る。
テラはそんな外の様子をしばらく眺めていたが、やがて意を決したように手紙を手に取ると、
庭先へと降り立った。

水溜りを避けながらリカルドの墓標の前に辿りついたテラは、墓石の上に手紙を置くと火竜術で
火をつけた。手紙が灰になっていくのを眺めながら、テラはゆっくりと墓標に話しかける。

「リカルド・・・わたし、戻るわね。あなたと一緒に・・・じゃないのが残念だけど、やっぱり自分の
務めは果たさなきゃ。それが、わたしを竜王に選んでくれた人たちへの恩返しでもあると思うし・・・。
ねえ、もう少し・・・そっちで待っていてくれるかしら。」

しばらく黙って墓標を見つめていたテラは、やがってにっこりすると一言「ありがと。」と呟き、
家へと戻っていった。王宮へ戻り、自らの務めを果たすために。

見上げると、透き通るような青空。燃え尽きた手紙の灰が、爽やかな風に吹かれて散っていく。
どこか遠くで、蝉が鳴きだしたのが聞こえた。
夏は、もうそこまで来ていた。


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