Peppermint Kiss〜ジークのエイプリルフール〜
プロローグ
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2
3
4
エピローグ
−2−
「・・・というわけで、エディスさんを訪ねたら今日は留守だったんだ。」
「・・・・・・。」
「そこで、できればリカルドさんの木竜術で、師匠のために薬を作ってもらえるとありがたいのだが
・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。・・・テラ? 何か、私の顔に付いているか?」
「・・・だから、そうじゃなくて。」
場所は変わって、ここは火竜術士リカルドの家の前。玄関のドアの前に立った火竜テラは、ジークリート
に向かって小さく溜息をついてみせた。その仕草からは、僅かな苛立ちが垣間見える。
「わたしが聞きたいのは、どうしてアルが一緒にいるのか、ってこと。」
「あっ!」
テラに視線を向けられて、アルフェリアは組んでいたジークリートの腕を離した。慌ててその場から数歩
後退ると、頬を染めてそっぽを向く。その様子は、まるで初心な恋人のようだった。
「その・・・あたし、気が付かなくて。ごめんなさい!」
「あ、いや・・・」
「人前で、はしたないよね・・・」
「そんなことは―――――」
ない、と言いかけたジークリートは、背後からの冷ややかな視線に思わずその言葉を呑み込んだ。
二人の様子を眺めているテラは、相変わらずの無表情だった。だが、よく見るとその眉が微かに
顰められている。
ほんの幼少の頃より、テラと多くの時間を過ごしてきたジークリートにだけ見分けられる、僅かな差。
間違いない。・・・テラは、どうやら怒っているらしい。
「とにかく! 木竜術が遣える人を探しているんだ。リカルドさんに会わせて―――――」
「ダメ。」
ジークリートの言葉を、テラが容赦なく遮る。
「リカルドは、仕事で昨日は徹夜だったの。まだ寝てるから、起こせない。」
「そこを何とか―――――」
「アルに何とかしてもらったらいいじゃない。」
“アルに”という言葉に込められた、冷たい響き。それにジークリートが気付いたときは、全ては手遅れ
だった。
「とにかく、今日はダメなの! ・・・帰って。」
「待っ―――――」
ばたん。
二人の目の前で、ドアが荒々しく閉められる。
(しまった・・・)
どうやら、アルフェリアと腕を組んでいたことがテラの気に障ったらしい。テラも年頃の女の子・・・その
気持ちを推し量れなかった自分が、迂闊だったのだ。
しばらくの間、恨みがましい目で玄関のドアを眺めていたジークリートは、やがてのろのろとその場から
踵を返した。
「仕方ない・・・。他を当たろう。」