カントリー・ロード
プロローグ
1
2
3
4
エピローグ
−4−
「うっ・・・ひっく、ふえぇ・・・」
「・・・ココ、もう泣くのはよせ。」
「だ・・・だってぇ・・・」
暗竜術士の家の居間は、重苦しい雰囲気に包まれていた。
トトの言葉に、それまですすり泣きを続けていたココは、涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げた。
「お母様をっ・・・あのままにしておくことは・・・できないけど、故郷に帰ったら二度と会えないなんて・・・。
私には選べない・・・選べないよ・・・」
「・・・・・・。」
再び、室内にココのすすり泣きの声が響く。しばらくして、トトはぽつりとこう言った。
「おれは・・・帰ってもらうべきだと思う。」
「え・・・!?」
トトの意外な言葉に、ココは椅子から思わず立ち上がった。
「本気なの!? ここで別れたら、もう二度と会えないのよ!?」
「でも、母さんには元気になってもらいたい。」
「トト、あなた・・・」
寂しくないの・・・と言いかけてココはハッとした。自分には帰るべき「里」があり、そこには両親や姉妹も
いる。だが、トトには・・・そのどちらもない。
「いいの、それで!? あなたは、お母様がいなくなったら、本当にひとりぼっちに・・・」
「構わない。」
静かに、しかし決然とトトは言い切った。
「母さんには、今まで温かいものをたくさんもらった。今度は、母さんに幸せになってもらう番だ・・・
そうだろう?」
「でも・・・」
「本当は、怖かった。」
トトの意外な告白に、驚いた顔になるココ。
「母さんがいなくなったら、おれは一人になる。それが・・・とても怖かったんだ。だから、今まで故郷の
ことを言い出せなかった・・・。」
「だったら、どうして・・・!」
「でも、母さんが苦しんでいるのを見てたらな・・・。帰れるところがあるんなら、帰った方がいい・・・
帰れるうちに。」
「トト・・・。」
「これからは、残された卵を守って暮らす。次の暗竜術士が現れるまで・・・。」
なおも反駁しようとしてトトの顔を見上げたココは、その頬を伝う一筋の涙を見て言葉を失った。
「・・・どうしたの、二人とも・・・?」
「母さん・・・」
「お母様!」
聞こえてきたか細い声に、トトとココは急いで寝室に駆け込んだ。ベッドに寝ていたセトは、二人の姿を
認めると弱々しく微笑んだ。
「・・・や、トト・・・ココ・・・ごめんね、心配かけて・・・」
「そんなことはいいんです! どうか、ゆっくりと休んでください!」
「へへ、ありがと・・・。でも、小さい二人を置いて、ボクだけ寝込むわけにいかないよね・・・もっともっと、
がんばらないと・・・」
「え? あの、私たちはもう・・・」
言いかけたココを手で制するトト。
「すぐに・・・元気になるからね・・・」
という言葉を最後に、セトは再び意識を失った。首を傾げるココ。
「・・・今のは、一体・・・」
「多分、記憶が混乱してるんだと思う。ラルフさんが言ってたろう・・・もう、母さんはおれたちのことが
分からなくなってるのかもな・・・」
「そんな・・・」
頭を抱えるココ。そんなココの様子を黙って見ていたトトは、やがてぽつりと呟いた。
「どうする? ココ・・・。」
「・・・・・・。」
返事の代わりに、ココはトトに抱きついた。自分の腕の中で泣き崩れるココを、トトは優しく抱きしめた。
*
「・・・どうやら、決めたみたいだね。」
「はい。」
あくる日、トトとココは揃って地竜術士の家を訪れた。二人の瞳に決意の色が宿っているのを見て、
ラルフは頷いた。
「それで、どうするんだい?」
「はい―――――」