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カントリー・ロード


 −プロローグ−

女の子は泣いていた。
しかし、その両親はそれを気にする風もなく、ここのところ毎晩恒例となった喧嘩に明け暮れていた。

「うるせぇぞ、このアマ! てめーは黙ってすっこんでろ!!」
「元はと言えば、あんたが悪いんじゃないか!」
「なんだと!?」
「ねぇ・・・おねがい、もうやめて・・・」

母親に叩かれた頬がまだ痛かった。しかし、女の子は健気にも喧嘩する両親を必死に止めに入った。

「あんたは引っこんでな!」
「ガキのくせに、大体おめーは生意気なんだよ!」

がしゃーん。
母親に突き飛ばされた女の子のすぐそばで、父親が投げつけた酒瓶が木っ端微塵になる。

「こんのぉ・・・俺に逆らう気か!!」

殺される。
父親の怒りに狂った目を見てそう直感した女の子は、一目散に家から飛び出した。

月の綺麗な晩だった。家の前から続く坂を必死になって駆け下りた女の子は、その終わりにある
広場に転がり込んだ。
もしかしたら、とうさんが追いかけてくるかもしれない。必死になって女の子は自分の隠れ家――――積まれた廃材の隙間に、小さな女の子だけが入れる空洞があった――――の中へ潜り込んだ。
悲しい時、辛い時・・・女の子はいつもここに来て一人心を落ち着けるのであった。

(明日になったら・・・かあさんもとうさんも、元にもどってる・・・!)

お守り代わりの勾玉を強く握り締め、女の子は必死に祈った。明日になったら、きっと・・・!


  *


泣き疲れていつの間にか眠ってしまってから、どれくらい経っただろうか。
ふと地面が小刻みに揺れ始めたのに気付き、女の子は目を覚ました。地震?・・・と思う間もなく、
それは突き上げるような本格的な揺れに変わる。

「え・・・? あ・・・きゃあああああ!」

女の子が最後に見たのは、自分に向かって崩れ落ちてくる木材の山。
そして、全ては暗転した。


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