チーム
1
2
3
4
5
6
−5−
こうして、泥縄のうちにこの年は暮れ、翌年の春がやってきた。陣の本営で、一帯の地図を前に
アズサはカエデと顔を見合わせていた。
「・・・妙だな。」
「はい。」
例年であればとうに報告があるはずの、春軍の来襲がまだない。セルティーク、サワンといった他団は
例年通りの交戦状態にあり、リュネルだけが無視されているのは、どう考えても奇妙だった。
「これも、春軍の策の一つなのだろうか?」
「考えられますね。焦れた我が軍が討って出たところを、待ち伏せして包囲殲滅する気なのかも
知れません。」
「うむ。ひとまず、斥候を増やして―――――」
頷いたアズサが、そう言いかけたときだ。幕舎の入り口の布が撥ね上げられ、ナギが飛び込んできた。
余程急いで来たのか、肩で大きく息をしている。
「もっ・・・申し上げます!!」
「何か! 落ち着いて申せ!」
「たった今、霊峰からの伝令が到着しました! それによると、霊峰が春軍の先鋒・・・春一番隊
に包囲されているそうです! 陥落は時間の問題と思われます!!」
「いかん!!」
ナギの声と同時に、アズサは立ち上がった。手にした七星刀『破軍』を腰に差しつつ、幕舎の入り口
へと向かうアズサに、カエデが声をかける。
「アズサ様! どちらへ・・・」
「決まっている! センジュを救うのだ!!」
「しかし! まさか、お一人で向かわれるおつもりですか!? せめて、多少なりとも軍がまとまってから
―――――」
「それでは遅い! 霊峰の陥落はまた取り戻せばよいが、有為の人材の損失だけは、何としても
防がねばならぬ!!」
ちらりと肩越しに後ろを振り向いたアズサは、凄みのある笑みを浮かべてみせた。
「カエデよ! そなたは、部下を集めて後から追ってくるがよい。私は一足先に参る!」
「は・・・かしこまりました!」