Day by day
プロローグ
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エピローグ
−エピローグ−
ノートを膝の上に乗せてぱらぱらとめくっていたユイシィは、やがて顔を上げると真剣な面持ちで
ランバルスに問いかけた。
「師匠も・・・『永遠の命』が欲しいと思われたことがあるのですか?」
「俺か? そうさなぁ・・・」
両手を頭の後ろで組むと、ランバルスは遠い目になった。
「まあ、俺も人間だからな。若い頃には、そういうことを考えたこともあったさ。でもな・・・」
「でも・・・?」
「今は『永遠の命』なんて欲しくない、と言い切れる。あいつら・・・シーダやヴィアンカが死んだ時に
気付いたのさ。大事な奴らがみな先に死に、自分だけが残されるというのは・・・俺には耐えられそうに
ないしな。」
「・・・・・・。」
ここまで言うと、ランバルスは自分のことを食い入るように見つめてたユイシィの方を向いてにやりと
笑った。
「それにな、もし俺が『永遠の命』なんてものを手に入れたら大変だぞ。さぞかし怠け者になるだろう
からな。」
「・・・怠け者、ですか?」
「そうだ。多分、生きていくために必要な最低限のこと以外はやらなくなるだろうな。遺跡の調査も、
こうして本を読んで勉強することも・・・『永遠の時間』があるんだ、別に今やらなきゃいかん理由は
どこにもない。」
「はあ。」
「何もしないくらいだったら、俺が家にいても邪魔なだけだろう? ・・・ああ、ユイシィにとってはその方が
いいのか?」
「もう、師匠ったら!」
「はっはっは、冗談だよ。」
自分がからかわれていることに気付いたユイシィは、少し赤くなると屈託なく笑うランバルスを叩く
仕草をした。
「引き止めて悪かったな。・・・まだ、色々とやることが残っているんだろ?」
「ええ・・・いえ、もうそれほどでもありません。後は夕食の準備が残っているくらいですから。」
「晩メシか。・・・今晩はなんだ?」
「それは、出来てからのお楽しみです。」
「おう、そりゃ楽しみだな。」
ここまで言うとユイシィは席を立ち、お盆を手に取りながらこうランバルスに念を押した。
「後で呼びに来ますから、それまでここでおとなしくしていてくださいね。」
「分かった分かった。」
こうして部屋を出たユイシィは、ランバルスから見えない場所まで来ると幸せそうな、それでいて少し
恥ずかしそうな笑顔になって階段を一歩一歩下り始めたのだった。
(私も・・・『永遠』は欲しくない、かな。・・・だって、そうしたら師匠と過ごせる時間が色褪せてしまいそう
だもの・・・)