MOON RIVER    2           

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夏の都は、南大陸のほぼ中央部をおよそ百リーグ(約四百八十キロメートル)に亘って横断する大河、レーンディア川を見下ろす南岸にあった。
同名の湖を水源とするレーンディア川は、その二十リッジ(約千九百メートル)を超える川幅の広さ及び流れの緩やかさから、有史以前より天然の運河として利用されてきており、南大陸が人間族の支配下に置かれてからもその現実は変わらなかった。一方で、流域一帯は深い峡谷を形成しており、水面から垂直に近い角度でそそり立つ岩壁の高さは、低いところでも一万リンク(約千九百メートル)はくだらない。とても人間が攀じ登れるものではなく、このため夏の都も他の精霊の都同様、現在も人間族不入の地という地位を確保し続けることができていた。

「ノルテ様、夏の都へようこそお出でくださいました。」

ノルテを地面に降ろしたカリストが、その場で一礼する。その肩越しに広がる、初めて見る夏の都の外観に、ノルテは目を奪われていた。
夏の都は、高い城壁に囲まれた城塞都市だった。城壁の上部には、階段状に更に何段かの城壁が連ねられており、各所に円形の望楼が構築されている。望楼の屋根は特徴的な円形を帯びており、それは城壁の内側に見える建造物と同様だった。峻険な山岳地帯に建造されているためか、城壁の外縁に水を湛えた堀は見当たらない。緑に乏しい風景と相まって、それが見る者にどことなく殺風景な印象を与えるようだった。

「止まれ! 何者か!」

正面には、壮大な構えの門があった。近付く二人に向かって、門衛と思しき夏の精霊が手にしていた槍を構える。

「お役目ご苦労。私はカリスト、セレネ王の従者の筆頭を務める者です。この方は、近衛隊アリゼ・マリティム副頭首、ノルテ様にあらせられます。」
「これは、カリスト様。このような早朝から、お役目ご苦労様です。・・・そちらは、マリゼ・アリティムの副頭首と仰いましたか?」
「いかにも。我が王のたっての願いで、はるばる遠方よりお招きしたのです。速やかにここを通しなさい。」
「しかしですね・・・。アリゼ・マリティムの副頭首の席は、長らく空席であると私は聞いています。・・・何か身分を証明するものがなければ、おいそれとお通しするわけには―――――」
「オイ、こんな朝っぱらから何を揉めてるんだ。」

衛兵とカリストの言い合いの声が聞こえたのだろう。門の内側から、数人の兵を従えた青年が現れた。携えている槍、その軍装からして、どうやら身分のある立場らしい。

「あ、隊長。いえその、この人がマリゼ・アリティムの副頭首だと言うので・・・。」
「あん? どこのバカがんな寝言を―――――」

衛兵の声に、何気なく青年がノルテの方へと視線を向けた。と、見る間にその眼が驚愕に見開かれる。

「こッ・・・ここここれは、ノルテ様ッ!! どうして、このようなところに・・・ッ!!」
「・・・イクシオン、あなたでしたか。」
「は、はいッ!! オイお前ら、何してる! すぐにお通ししないか!!」
「もう、四年になりますか。・・・その後、軍では真面目に務めているようですね。」
「はいッ! コーセルテルにてノルテ様にいただいた言葉の数々、今も肝に銘じて毎日を過ごしておりますッ!」
「よろしい。」

イクシオンは、かつてノルテがコーセルテルで返り討ちにした夏の精霊の一人だった。当時は上官も手を焼く札付きの乱暴者だったのだが、どうやら今は真面目に軍務に励んでいるらしい。
直立したイクシオンに向かって小さく頷いたノルテは、その傍らに呆然の体で立ち尽くしていた衛兵に声をかけた。

「あなたの、名前は?」
「は・・・はッ! ライオスと申します!」
「先程の、話ですが。・・・これで、門を通してもらえますか?」

言いながらノルテが取り出したのは、かつてセレネから授けられたメダルだった。それを目にしたライオスが、糸の切れた人形のように何回も頷く。

「は・・・た、確かにッ!! その、しッ・・・知らぬとは言え、とんだご無礼を・・・ッ!!」
「いいえ。あのときのあなたの行動は、門衛として正しいものでした。・・・今後も、忠実に役目に励むことを期待します。」
「は・・・ははッ!! ありがたき幸せ!!」
「イクシオン。この者を、決して罰することのないように。」
「はいッ!! かしこまりました!!」

居並ぶ衛兵たちに向かってもう一度頷くと、ノルテはカリストの後を追って歩き出した。
夏の都の内部は、レンガ造りの建物が所狭しと立ち並んでいた。大通りに面した建物の壁面は優美かつ細緻な彫刻で覆われ、至る所に架け渡された種々の大きさのアーチと共に、この都の歴史が長いことを窺わせた。夜ともなれば、その灯りと相まって、さぞ幻想的な雰囲気に包まれることだろう。
しかし、見事な街並みとは裏腹に、このときの都の雰囲気はあまり居心地の良いものではなかった。言葉にするのは難しいが、敢えて言うならば、ピリピリとした緊張感のようなものが周囲に充満しているのだ。
都でも一番の大通りを歩いているというのに、見かける人影は疎らだった。時折投げかけられる視線は、常に警戒心や猜疑心を含んだものであり、豪放磊落な性格の持ち主が多いはずの夏の精霊たちにしては奇妙だった。きっと、それは自分がここに呼ばれた理由に関係があるのだろう。
周囲の様子に気を配りながら、ゆっくりと歩くノルテ。その半歩前を歩いていたカリストが、ちらりと振り返るとノルテに微笑みかけた。

「このようなことを申し上げては、失礼に当たるかも知れないのですが・・・。」
「・・・・・・。何でしょうか?」
「何故、我が王がノルテ様をここにお招きになられたのか。その理由が、先程のノルテ様の立ち振る舞いを拝見した今、私にも腑に落ちた気が致します。」
「どういう、ことですか?」
「ノルテ様は、ライオスの行動を褒められた上で、最後にイクシオンに対して、ライオスを罰することのないよう仰いました。・・・普通の夏の精霊であれば、自分の通行を拒んだライオスに対してその苛立ちをぶつけることはあっても、その働きを賞賛することは、まずないと申してよろしいでしょう。ましてや、その上官に向かってあのような言葉をかけることなど、なかなか出来ることではございません。」
「・・・・・・。」
「私も、セレネ王にお仕えする傍ら、ノルテ様のことを耳にする機会が多くございました。王は、ノルテ様のようなお考えこそが、今の夏の都には必要なのだと、繰り返し仰っておられます。・・・先程の出来事で、私もその思いを強く致しました。」
「私は、別に・・・当然のことを、口にしたまでですが。」
「ではそれが、ノルテ様の“強さ”なのでございましょう。先程のお言葉で、少なくともライオスは、今後ノルテ様に対して揺ぎ無い忠誠を誓うことになるはずです。・・・今までの敵を、味方へと変えてしまう。ノルテ様程の度量をお持ちの頭首がせめて数名でもいらっしゃれば、夏の都もこのような事態を迎えずに済んだものを・・・。」

(このような・・・事態?)

最後の意味深な言葉に、ノルテは心の中で首を傾げた。しかし、再び前を向いたカリストは、それ以上の説明をする気はないようだった。
やがて二人は、一際大きな丸屋根の建物の前へと辿り着いた。入り口に繋がる広間に足を踏み入れたところで、振り向いたカリストがノルテに向かって一礼した。

「こちらが、夏の都の王宮でございます。私は王に、ノルテ様の来訪を伝えて参りますので、しばしの間こちらにてお待ち願えますか。」
「分かりました。」
「では。後程また、お迎えに上がります。」

再度一礼したカリストは、踵を返すと王宮の奥へ向かって歩いていった。一人残されたノルテは、ゆっくりと周囲を見回した。ふと、その視線が上を向いたところで止まる。

(綺麗・・・)

広間の天井には、その丸い屋根を天球に見立てて、夜空を彩る星々が所狭しと描かれていた。ノルテにも馴染みのある明るい星から、名も知らないような目立たない星、果ては星雲や銀河といったものまでが、その位置ばかりか大きさや色合いまで含めて見事に再現されている。
小さい頃から独りで過ごすことが多かったノルテにとって、夜空の星々はごく身近なものだった。辛いことがある度に、夜空を見上げては星々に語りかける。その習慣はコーセルテルに来てからも変わることはなく、暇を見付けては地竜術士家の書庫で文献に目を通すようになってからは、ノルテの持つ天文に関する知識は、他者の追随を許さないほどになっていた。
どうやら、夏の精霊たちはその一見粗野にも思える言動とは裏腹に、学術・芸術共に深い造詣を持っているようだ。街並みに見られる種々の装飾や建物の造形、そして宮殿内の絵画の高い質からもそれは明らかだった。

(・・・・・・?)

うっとりした様子で天井を眺めていたノルテは、ここで聞こえてきた音に我に返った。乾いた木の打ち合わさる音が、宮殿の内部から響いてくる。興味を惹かれたノルテは、音のする方へとその歩を向けた。

(こちら・・・かしら)

向かった先は、宮殿の中庭だった。明るい陽光が一杯に降り注ぐ中、数人の夏の精霊たちが棒で打ち合っている姿が目に入る。その中心に立ち、次々に周囲を打ち倒していたのは、長い髪を三つ編みにした小柄な少女だった。

「どうした、この腰抜けどもめ! 私を満足させる相手は、ここには居らんのか!」
「ですから、姫様・・・」
「良いから、本気で打ち込んで来いと言っている! さあ、早う参れ!!」

大言を吐くだけあって、その武術の腕は確かなものだった。次々に突き出される棒を躱すその動きは美しく、さながら舞を見ているようだ。

(・・・・・・)

しばらくの間、稽古の風景を黙って見守るノルテ。その耳に、傍らの柱に寄りかかった兵たちのぼやきが届く。

「ったく、やってらんねーよなぁ。どんだけやりゃあ気が済むんだよ。」
「そうだよな。・・・俺らみたいな一兵卒とやりあって、何か意味があるのかね。」
「知るか。いつ戦いが始まってもおかしくねーってのに、今更焼け石に水だっつーの。」
「ま、言って俺らは最弱シャマールの一員だからな。いきなり前線ってことはないだろうさ。」
「だといいけどよ。・・・おっと、またお呼びだぜ。あーあー、これじゃ体がいくつあっても足りねーよ。」
「全くだな。仕方ない、諦めるまで相手を・・・って、おい! ちょっと、あんた!」

うんざりした様子の兵が、凭れていた柱から身を起こす。それを手で制したノルテは、中庭の中央に向かって歩き出した。その視線の先では、再び周囲の兵全てを打ち倒した少女が鼻を鳴らしたところだった。

「話にならん・・・。これでは、全く鍛錬にならんではないか。」
「少し、よろしいですか?」
「む?」

振り向いた少女が、ノルテに向かってさっと棒を構える。
丸く大きな瞳に、短く太い眉。きゅっと結ばれた口元には、意志の強さが現れている。どちらかと言えば男性的な外見だったが、こうして武装をした姿には一種の野性的な美しさがあった。

「貴様、見ない顔だが・・・。私をシャマール頭首、ディオネと知って声をかけたのであろうな?」

警戒心も露わだった相手の表情が、ノルテの夏軍の軍装を認めて幾分和らぐ。棒を下ろした相手に向かって、頷いたノルテは周囲を見回しながら言った。

「見たところ、武術の稽古相手を、探している様子でしたので。」
「ほう。では、貴様がその相手になるとでも言うのか?」
「はい。・・・では、それを借してもらえますか。」

近くに立っていた兵から棒を受け取ったノルテは、ディオネと名乗った少女と向かい合った。そのまま、構えるでもなく立ったままのノルテの様子に、ディオネの片眉が上がる。

「どうした、早う構えんか。それくらいは待ってやるぞ。」
「いえ、このままで結構です。」
「ふん。貴様、無謀なのか、それともただの阿呆なのか・・・。後悔しても知らんぞッ!」

口元を歪めたディオネが、地を蹴ってノルテに迫ると鋭い一撃を繰り出した。

「ぐッ・・・!!」

次の瞬間、棒を取り落としたのはディオネの方だった。信じられない・・・といった表情で手首を押さえたディオネに向かって、眼を閉じたノルテは後ろを向いた。

「・・・では、次は後ろからどうぞ。」
「な・・・貴様、私を愚弄する気かッ!! ふざけた真似は止めて、こちらを向いて構えるのだッ!!」
「あなたが、私に触れることができたら、喜んで。」
「ぐぅぅ・・・この、言ったなあぁッ!! もう容赦せんぞぉッ!!」

歯をギリギリと噛み締めたディオネが、再びノルテに向かって飛び掛かった。後ろを向いたままの相手の左後方に回り込むと、その首筋に狙いを付け、手にした棒を地面すれすれから素早く掬い上げるようにして振る。

(もらったあぁッ!!)

そう思った瞬間、ぱっと振り向いた相手の放った電撃のような突きがディオネを襲った。避け切れなかったそれを右肩に受け、優に二十リンク(約四メートル)は吹き飛ばされたディオネは、そのまま地面へと叩き付けられた。

「ぐはぁッ!!」

一瞬の早業だった。あまりの鮮やかさに、周囲で成り行きを息を呑んで見守っていた配下の兵たちからも、声一つ上がらない。

(な・・・何と、いう―――――)

恐るべき強さだった。今までにも、腕自慢で鳴らす他頭の頭首と武術の試合で戦ったことはあったが、ここまで一方的に敗れたのは初めての経験だった。
ようやく身を起こしたディオネの喉元に、ぴたりと棒が突き付けられる。自分のことを冷たい目で見下ろした相手を、肩を押さえたディオネは恐れ戦きながら見上げた。
夏の精霊たちの間では、その武力が何事にも優先する、という考え方が長年一般的だった。武術による対決における敗者は、勝者のどのような要求にも応じる義務が生じる。それは地位や財産、果ては配偶者にすら及ぶ。極端な場合には、敗者はその生命を要求されることすらあったのだ。
それではあまりにも前時代的であり、夏の都の衰退に繋がるとして、現夏の精霊王セレネの名を冠した「セレネ法典」が制定されたのは、今から三年前のことだった。武力を背景にした、他者からの搾取の禁止を最大の特徴としたこの法典は、夏の都に大きな議論を巻き起こした。武力に劣る精霊たちを中心に歓迎を表明する者がいる一方で、今までの都の支配層、特に軍関係者からは大きな反発の声が上がった。この法典が夏軍の弱体化に繋がると声高に主張し、法典の遵守を拒否する者が後を絶たなかったのである。

「くッ・・・!!」

これ程の武力の持ち主が、まさか法典賛成派とも思えない。果たして相手は、自分にどのような要求をしてくるだろうか。何しろ、ここまでの完敗を喫したのである。どんな無体な要求をされても、文句を言える筋合いではない。
こうして、戦々恐々として相手の言葉を待っていたディオネに対してかけられたのは、予想だにしない一言だった。

「何を、それ程に焦っているのですか。」
「な・・・んだとッ!?」
「焦りからは、何も生まれません。・・・あなた武術の腕は、確かなものですが、その焦りが全てを曇らせています。」

ここで言葉を切った相手が、棒を退いた。続いて自分に向かって差し出された手を、ディオネは信じられない思いで見つめた。

「あなたには、自分を見つめ直す時間が必要です。・・・自分には何が必要で、何が不足しているのか。それを補うためには、どうすれば良いのか。それを、じっくりと考えてみることです。」
「・・・・・・。その・・・、貴殿は一体―――――」
「ノルテ様ー! ああ、こちらにお出ででしたか。」

ディオネが立ち上がったとき、大きな呼び声が聞こえた。その声に、二人の勝負を見守っていた兵たちが慌ててその場に膝をつく。
中庭にやってきたカリストは、ディオネの姿を目にして一瞬驚いた表情を浮かべかけたが、すぐに笑顔になるとその場で一礼した。

「大変お待たせ致しました、ノルテ様。セレネ王は大変お喜びで、すぐにお会いになりたいと仰せです。ディオネ様も、ご一緒に参られるようにとのことです。」
「そうですか。では、行きましょうか。」
「待て、カリストよ。そなたは今、この者をノルテと呼んだか?」
「はい。こちらの方は、夏軍でも伝説の“双璧”にして、近衛隊アリゼ・マリティム副頭首であらせられます、ノルテ様でございます。」

ディオネに向かって一礼したカリストが、ここで小さく首を傾げた。

「ところで・・・お二人は、こちらで何をなさっていらしたのですか?」
「そ、それは―――――」
「武術の稽古を。・・・ディオネ殿、そうですね。」
「あ、ああ、うむ。その通りだ。」

ノルテに目配せされ、ディオネは慌てて頷いた。そんな二人の様子に、カリストがにこりと笑った。

「左様でございましたか。やはり、武人同士が親睦を深められるには、それが一番の近道でございましょう。・・・さあ、こちらです。」

カリストの先導で、何事もなかったかのように歩き出すノルテ。その後について歩きながら、ディオネは改めて先程の勝負を心の中で反芻していた。
彼我の武術の腕前に、格段の開きがあるのは明白だった。現状では、たとえどのような手加減をしてもらったとしても、自分が勝てる確率は皆無に等しいだろう。
驚かされたのは、むしろ勝負の後の言葉だった。完膚無きまでに破った相手に対して、冷静にその敗因を指摘し、それを改めるように忠告する。その態度は毅然としたもので、相手を侮辱するものではなく、かと言って相手に媚びたものでもない。
自分だったら、どうしていただろうか。勝利に酔うことなく、敗れた相手のことを慮った言動を取ることが、果たしてできていただろうか。

(いや・・・。私には、無理だ・・・)

しばらく考えたディオネは、小さく首を振った。直情的な自分の性格のことは、よく知っている。恐らく、勝利の勢いに任せて、相手に無理難題の一つや二つは突き付けてしまっていただろう。

(それにしても・・・)

こうして冷静になって思い返してみると、ノルテの言葉は一々耳に痛かった。そして、それに対して反発する気持ちが湧いてこないことが、我ながら不思議だった。
それは、勝負で完敗したからなのか。それとも、相手の度量の大きさに触れたからなのか。
十年前、新たな夏の精霊王として即位したセレネは、近衛隊アリゼ・マリティムの頭首については、以後も自らが兼任すると表明した。そして、新たな頭首の人選について周囲から問われる度、こう答えたものだった。
曰く、頭首の人選は既に済んでいるが、今は相手の希望を容れ、この都に無理に迎えることはしていない。時が来れば必ずここに迎えるつもりであり、その者は自らに匹敵する強大な武力と、類稀なる猛き心を持ち合わせているのだと。
そんな王の言葉を、自分を含めた夏の精霊たちは、必ずしも本気にしていた訳ではなかった。いつしか、その幻の人物は揶揄もこめて“夏軍の双璧”と呼ばれるようになっていったのだった。

(伝説は・・・本当だったのだな)

宮殿の廊下を歩きながら、ディオネはノルテの背中を眩しそうに見つめたのだった。


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