私の名前
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書斎に入ったフィリックは、机で書き物をしていたジラルドに声をかけた。
「ね、父さん。ちょっといい?」
「何だ。」
「ぼくの名前ってさ・・・どうやって決めたの?」
「どうしたんだ。藪から棒に・・・」
「あのさ、今日歴史の授業で命名の話が出てね・・・」
フィリックから事のあらましを聞いたジラルドは、重々しく頷いた。
「なるほど。そういう訳だったのか。」
「うん。それで、ぼくの場合はどうだったのかと気になってさ。」
「そうだな。“フィリック”とは、私の国の言葉で“光”という意味だ。お前は光竜だったからな、そのもの
ずばりの名前という訳だな。」
「ふーん。」
「ちなみにだな。お前は男だったからフィリックと名付けたが、もし女だったらフィリカという名を付ける
つもりだった。意味は同じだからな。」
得意げな表情を浮かべたジラルドは、さらに言葉を続ける。
「これは、文字の画数も考えて決めた縁起のいい名前なんだぞ。」
「縁起・・・?」
「うむ。画数の合計によって、その子の運勢が決まると言われておってな。随分とたくさんの本に
当たったものだ。」
「へえ。それは初耳だなあ。」
「それから、どんな響きの名前にするかも気を遣ったんだ。名は体を表すと言ってな、音の響きも
重要な意味を持つ。」
「ふーん? それで、ぼくの名前はどんな性格を表してるわけ?」
「うむ。聡明利発で、集中力や行動力が抜群という名前だそうだ。」
「・・・って、ちょっと欲張り過ぎじゃないの?」
「いいじゃないか、自分の子供の幸せを願わん親はおらん。他にもな・・・」
(まだあるの・・・?)
こうして、筋金入りの完璧主義者であるジラルドの話は、フィリックの困惑を他所に延々と深夜まで
続いたのだった。