私の名前
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自室の入り口に人の気配を感じたガーライルは、手元の辞書から顔を上げた。
「・・・・・・。」
「・・・ロアか? ・・・おかえり。」
「・・・・・・。」
「どうした? そんなところで。」
無言でガーライルのことを見つめていたロアは、促されて部屋の中へと入ってきた。正面から自らの
術士のことを見つめ、ぽつりと言う。
「・・・私の、名前。」
「名前?」
「・・・どうして?」
「ああ・・・」
ロアの言わんとするところを察し、ガーライルは頷いた。手にしていたペンを机の上に置き、ロアに
向き直る。
「おまえの名前は・・・竜都から取った。ロアノーク、のロアなんだ。」
「・・・・・・。」
「本当は、もっとしゃれた名前がよかったのかもしれないが。・・・俺には、そんな学もなかった。
あのときは、文字すら読めなかったんだからな。」
手元の辞書に目をやったガーライルが、自嘲気味に笑った。
「だから、おまえには悪いと思ってる。本当は、お母さんみたいなきれいな名前をつけてやれれば・・・」
「ガル・・・」
言葉の途中で、ロアはガーライルの手をそっと握った。そして、ガーライルの顔をじっと見つめて小さく
首を振る。・・・どんな雄弁にも勝るその仕草に、ガーライルは微笑むとロアの頭を撫でたのだった。
「・・・そうか。ありがとう。」