私の名前
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「そうねぇ・・・。」
学校から帰ったエルフィートとアルフェリアは、早速術士であるエディスに自分たちの名前の由来を
尋ねた。眉を寄せていたエディスは、二人が真剣な面持ちで答えを待っているのに気付くと、微かに
苦笑いを浮かべた。
「ごめん。特にないんだけど。」
「え?」
「どういうこと?」
「だから、特に理由はないってことよ。響きのいい名前にするようには心がけたつもりだけど。」
この予想外の答えに、エルフィートとアルフェリアは顔を見合わせた。
「い・・・意外だなあ。この名前って、適当に決められてたのか。」
「そうよね。エディスのことだから、由来とか意味とか・・・ちゃんと考えて付けたのかと思ってたのに。」
「まあ、そういう考え方もあるけど。でも、それに縛られるのもつまらないでしょう?」
「そりゃ、そうだけどさ・・・。」
何となく物足りなさそうな顔の二人を尻目に、エディスは何を思ったのかくすっと笑った。
「名前、かあ・・・。」
「どうしたの? エディス。」
「あ、ううん。ちょっと、昔のことを思い出して。私が医者だったっていう話は、したことあったわよね。」
「うん。聞いたことがあるよ。」
「私がいた病院にはね、赤ちゃんを産むために入院してくる人がいてね。それで、赤ちゃんが生まれる
とね、お父さんとお母さんが名前を決めるんだけど・・・その様子が楽しそうで。いつも、羨ましいなあと
思ってたことを思い出したの。」
エディスの言葉に、エルフィートとアルフェリアは意外そうな顔をした。
「へえ・・・人間にも、命名の儀があるの?」
「いいえ。竜と違って、別に術をかけたりということはないんだけど。・・・それでも、健やかに育って
欲しいと願いをかけるところは一緒なのかな。」
「ふーん・・・。そうなんだ。」
「・・・もっとも、あなたたちにはもう少し“素直”とか“真面目”みたいな意味のある名前を選べば
よかったかも知れないって、ちょっと後悔しているところよ。」
「それは残念でした。もう手遅れだね・・・ね、アル?」
「うふふ、そうよねエル。」
「・・・・・・。」
こうして、揃って盛大な“邪笑”を浮かべた補佐竜二人を前に、エディスは苦笑いすると小さく肩を
竦めたのだった。