ガーティの夢              7 

 −7−

「こうして寝顔を見ると、まだまだガキだな。・・・あんなことを考えて実行させたやつとは、とても思え
ねえよ。」

焚火の向こう側で、毛布に包まって眠るカディオ。その無防備な寝顔を眺めていたシルフェスは、
やがておかしそうに呟いた。

「そうよ! カディオは、まだ十六なんだから・・・。」
「ガーティのヤツ、いい弟子に恵まれたな。」
「そうね・・・。ちょっと、切れすぎるところがあるんだけど。」
「はは、違えねえ。」

カディオとは焚火を挟んで反対側に並んで座り、小声で囁き交わすシルフェスとエリアル。今ここに
いるのはカディオを含めた三人だけであり、“長”という肩書きから解放されたシルフェスからは、肩肘
張った感じがきれいに消えていた。
しばらくして、エリアルがぽつりと呟く。

「シル・・・あなたは、これからどうするの? ・・・カディオの言った通り、これで戦いは一応なくなると
思うけど。」
「そうだな・・・。もし、そうなったとしても、オレはここに“長”として留まろうと思う。」

揺らめく焚火の炎を見ながら、シルフェスはゆっくりと言葉を継いだ。

「戦いがなくなるのは確かだろうが・・・カディオには悪いが、多分それは長くは続かねえだろうな。
オレたちも、アミアンの連中も・・・結局、腹の底では納得できねえんだ。何かのきっかけで、また
戦いが始まる。・・・いざというときに、この力でみんなを守ってやるくらいしか、オレにはできねえしな。」
「そう・・・。」
「エリアル、お前こそどうするんだ?」
「私?」
「そうだ。・・・ずっと、このカディオってヤツについていくのか?」

にっこりと笑うエリアル。

「決まってるじゃない。私は、この子の守護精霊になるって決めたんだから・・・ずっと一緒よ。」
「そうか・・・。」
「ええ! それにカディオは、ガーティの夢を継いでくれると言ったの。・・・それを、見守らなくちゃね。」
「・・・・・・。」

エリアルの言葉を最後に、二人はしばらくの間黙り込んだ。流石に森の中ということなのか・・・辺りは
虫の声でうるさいくらいである。
途中から夜空を眺めていたシルフェスが、やがて小声で呟いた。

「お互い、遠くまで来ちまったな。」
「そうね・・・。」
「今になってみるとな・・・あの頃が懐かしく思えることがあるんだ。」
「え?」
「お前と、エルムと、ガーティと・・・四人でよ。まだ、ガーティが小さかった頃のことだ。」
「・・・・・・。」
「ガーティには、悪いことを言っちまったと・・・時々思うことがある。あれは、あいつにはどうしようも
なかったんだよな。」
「シル・・・。」
「死ぬ前に、一言・・・そう言ってやりたかった。」

意外そうな顔でシルフェスのことを見つめるエリアル。そんなエリアルに向かって、シルフェスは
いつになく真面目な顔をした。

「オレからも頼む。・・・カディオを、守ってやってくれ。」
「・・・ええ! 任せてよ。」
「ガーティの夢か。・・・いつか、実現する日が来るのかな・・・。」
「信じて、待ちましょう・・・?」
「ああ・・・そうだな。」

顔を見合わせた二人は、やがてどちらからともなく微笑んだ。その視線の先には、幸せそうな寝顔を
見せるカディオがいた。


ガーティの夢(8)へ