HAPPY BIRTHDAY      3              10  11 

 −3−

次にロービィが訪れたのは、風竜術士の家だった。

「寄り合い? 面白そうじゃない、もちろん行くわよ。ね、いいよね師匠?」
「うん、ボクも賛成だね。楽しいことはどんどんやってみたらいい。」
「よかった。料理がまともにできる人が参加してくれるか心配だったんです。」

ロッタルクとミリュウの言葉に、ロービィはホッと胸を撫で下ろした。
二番竜たちはまだ年若く、そして各竜術士の家にはそれより年長の補佐竜がいるため、“手伝い”の
レベルを超えて家事を担当するという機会はあまりない(もちろん、某家のように“手伝い”さえして
もらえない哀れな補佐竜が存在することも事実だが)。そして、寄り合いに欠かせない“料理”に関して、
これは深刻な問題となりうる。
かく言うロービィ自身、料理の経験はほとんどないと言ってよかった。そんなロービィが一番の期待を
抱いていたのが、二番竜の中では一番の年長である風竜のロッタルクだったのだ。

「料理? いいわ、それも引き受けてあげるけど・・・一つ条件があるの。」
「はい、何でしょうか?」

ロッタルクは、ロービィの前に指を突きつけた。

「あたしのことは、今後“ロッタルク”じゃなくて“ロッティ”って呼ぶこと!」
「え? なんで?」

と、ここできょとんとした顔で口を挟んだのはロービィではなくミリュウだった。

「なんでって・・・」
「昔の風竜王の・・・立派な名前じゃないか。何が不満なんだい?」
「もう師匠! 確かに立派だけど、この名前は・・・」
「あ・・・あのー・・・」

ミリュウの鈍感ぶりにくってかかるロッタルク。聞き忘れていたことがあったのを思い出したロービィは、
そんな二人に対しておずおずと声をかけた。

「日にちと場所なんですけど・・・いつ頃がいいでしょうか?」
「あ、そうね・・・場所はどこでもいいけど、やるのは三日後がいいと思うな。」
「三日後?」
「うん。いきなり明日って言うのは大変だし、それに明日明後日はどうも天気が悪そうなの。どうせ
だから、外で騒ぎたいじゃない?」
「あ・・・そうですね。じゃあ、希望は三日後・・・と。」

(風竜だから・・・場所は関係ないのか)

ちょっと羨ましく思いながら、回覧板に「野外・三日後希望」と書き込むロービィ。

「それじゃあ、また来ます。料理の材料とかについては、また後で相談にうかがいます。」
「分かったわ。待ってるわね。」
「そうだ。せっかくだし・・・ロッタルクさん、後でボクの特製の料理を教えようか。この間開発した
おもしろ料理・・・」
「寄り合いで出すのに? やめてください、風竜術士の株が下がるじゃないですか!」
「え? そうかな・・・」
「そうなの!!」

(ここも色々と大変なんだなあ・・・)

また背後で言い合いを始めた二人に小さくお辞儀をすると、苦笑いを浮かべたロービィは次の
目的地に向かって駆け出したのだった。


HAPPY BIRTHDAY(4)へ