HAPPY BIRTHDAY                8    10  11 

 −8−

「へえ・・・二番竜の寄り合いかぁ。楽しそうだね。」

取り込んだ洗濯物を入れた篭を抱えたマシェルは、ロービィの言葉ににっこりと微笑んだ。ロービィが
最後の目的地であるマシェルの家に辿り着いたときには既に太陽はすっかり西に傾き、辺りは茜色に
染まり始めていた。

「それで、補佐竜の寄り合いに参加されたことのあるマシェルさんに話を聞きたいと思ってここまで
来たんです。何か大事なことがあったら、教えてもらえませんか?」
「そうだね・・・」

篭を傍らのナータに手渡したマシェルは、束の間考える仕草をした。

「まだ、寄り合いをする場所は決めてないんだよね? 僕は基本的にどこでやってもいいと思うけど、
やっぱりいざというときのために・・・なるべく竜術士が近くにいる場所を選ぶか、誰かに一緒に来て
もらうといいよ。」
「はい。」
「それから、みんなにはそれぞれ『得意なこと』があると思うんだ。種族ごとに備わった能力もそう
だけど、一人一人の性格や経験も考えて当日の準備の分担を決めたらいいんじゃないかな。・・・その
間に仲良くなることもあると思うしね。」
「なるほど。」

このマシェルの言葉を聞いたロービィの頭に思い浮かんだのは、料理を受け持ってもらうつもりの
ロッタルクのことだった。料理に欠かせない火竜術と水竜術・・・年長の彼女の元にクララとリタの
二人を“手伝い”として配置すれば、けんかをすることなくうまく行くかも知れない。

「あとは・・・」

どうやら早くも当日のことを考えているのだろう・・・手を顎の下に当てて首を捻っているロービィの
様子を見て、マシェルはくすっと笑った。

「どうやらこのままいくと幹事はロービィになるみたいだけど・・・一人で何でも背負い込んじゃだめだよ。
こうしたことはね、自分も楽しむことが一番大事なんだ。」
「でも、師匠は『これも修行のうちだ』って・・・」
「ははっ、それはランバルスさんなりに気を遣っての言葉じゃないかな。・・・そう言われなかったら、
寄り合いをやろうって思わなかったでしょ?」
「あ・・・。」

言われてみれば、寄り合いを開催しようとロービィが決心したきっかけは、このランバルスの『修行』と
いう一言だった。もちろん、今となっては当日みんなと会えること・・・そして、みんなの喜ぶ顔が
見られるということがロービィにとっての寄り合い開催の原動力になっているのだが・・・。

(すごいなぁ・・・マシェルさん、何でも分かっちゃうんだ・・・)

尊敬の眼差しでロービィに見つめられたマシェルは、照れくさそうに頭を掻いた。

「さあ、もうすぐ夜になるよ。みんなを心配させないうちに、早く帰った方がいいんじゃないかな。」
「はい! 色々と、ありがとうございました!!」
「ううん。・・・寄り合い、うまくいくといいね。」
「はい!! それじゃ、失礼します!!」

満面の笑顔でぴょこんとお辞儀をしたロービィは、そのまま地竜術士の家へ向かって走り出した。
手を振り、こちらも笑顔でその様子を見送っていたマシェルは、ロービィの姿が視界から消えると、
ゆっくりと自分の家へと踵を返したのだった。


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